壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

赤朽葉家の伝説 桜庭一樹

イメージ 1


先日、家族史や年代記が好きなことを再認識したので、日本の小説も思い出してみました。藤村の「夜明け前」、北杜夫「楡家の人々」、山口瞳「血族」など・・・どれも昔に読んだものです。「血族」は「桜庭一樹読書日記」に取り上げられていて、再読を計画中。そして最近人気の作品としては、やはり本書でしょうか。面白いという大評判を聞いて躊躇していましたが、やっぱり読みたい! 刊行から二年で図書館の予約もやっと落ち着きました。

山陰の旧家、赤朽葉家の女三代の物語。三部構成で語られるのは、捨て子ながら製鉄業を営む旧家に輿入れし、千里眼奥様と呼ばれた祖母『万葉』、元レディースで人気少女漫画家となった母『毛鞠』、そしてニートの私『瞳子』。第一部(昭和28年から昭和50年)、第二部(昭和54年から平成10年)、第三部(平成12年から)というのは、私が物心ついてから現在に至る時代そのものです。

五十年余の歴史を軽妙な語りで駆け抜けながら、登場人物と時代背景を重ね合わせて描くという巧みさに感心しました。歴史の資料集から引き写したような時代背景の説明が(その時代を知っている者には平板に感じられましたが)、荒唐無稽ともいえるような神話的物語に不思議にもマッチしています。一人称で語る第三部のミステリ部分は不要かとも思いましたが、『瞳子』にとっては必要な出来事だったのですね。読書日記で知った桜庭さんのように、ほんわりと柔らかい感じで終わっていました。

二段組で300ページでしたが、面白くて長さを感じませんでした。