壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

関心領域  マーティン・エイミス

関心領域 マーティン・エイミス 北田絵里子訳 早川書房 図書館本 話題となった映画を見る機会は当分ないだろうと思い、原作本を読んだ。アウシュヴィッツについての物語をいくつか読んできた。『アウシュヴィッツは終わらない(これが人間か)』『夜』『アウ…

オカシナ記念病院  久坂部 羊

オカシナ記念病院 久坂部 羊 角川文庫 図書館電子書籍 『人はどう老いるのか』で著者は独自の死生観と高齢者医療の理念を展開していた。著者の考えには大賛成だ。この理念をユーモア小説仕立てにしたのが本書のようだ。 理想に燃える新人医師が後期の研修先…

蝶男  メヒス・ヘインサー

蝶男 エストニア短編小説集 メヒス・ヘインサー だいこくかずえ訳 葉っぱの抗夫 電子書籍 エストニアの文学は初めて読む。「葉っぱの抗夫」という出版元も初めてだ。非営利のウェブパブリッシャー&翻訳プロジェクトだそうだ。安価なKindleを探していて見つ…

破砕  ク・ビョンモ

破砕 ク・ビョンモ 小山内園子訳 岩波書店 図書館本 爪角〈チョガク〉という65歳の女がプロの殺し屋として描かれた『破果』の外伝らしい。冷徹な殺し屋として過ごした長い年月の果てに、彼女は自分自身の肉体と精神に衰えを感じながら、一人で生き抜こうとす…

歴屍物語集成 畏怖

歴屍物語集成 畏怖 天野純希/西條奈加/澤田瞳子/蝉谷めぐ美/矢野隆 中央公論新社 図書館本 歴史小説にしてホラーでアンソロジーで連作短編。テーマは、生ける屍、アンデッド、Living dead、Walking dead、殭屍(キョンシ)、グール … ようするに、テーマ…

グレイラットの殺人  M・W・クレイヴン

グレイラットの殺人 M・W・クレイヴン 東野さやか訳 ハヤカワ文庫 ワシントン・ポーの四作目。700ページを超える分厚い文庫本に、長らく手を出しかねていたが、意を決して読み始め、あまりの面白さに二日で読み終えた。英国推理作家協会のイアン・フレミング…

その本は ヨシタケシンスケ 又吉直樹

その本は ヨシタケシンスケ 又吉直樹 ポプラ社 図書館本 古めかしい装丁の本を移動図書館の棚で見つけた。中の頁も古色蒼然としている。二人の著者の組み合わせが意外でもあるが、さもありなんとも思う。話題になったらしいが、知らなかった。 年寄りで目が…

濃霧は危険  クリスチアナ・ブランド

濃霧は危険 クリスチアナ・ブランド 宮脇裕子訳 国書刊行会 奇想天外の本棚 図書館本 クリスチアナ・ブランドという英国のミステリ作家の名前は知っているが、読んだ覚えがない。もう忘れているのかもしれない。本書は移動図書館の児童書コーナーで見つけた…

近畿地方のある場所について   背筋

近畿地方のある場所について 背筋 KADOKAWA Audible ネットやSNSに疎い年寄りも、評判のホラー本を怖いもの見たさで読んだ(聴いた)。図書館の予約の列はまだ途切れそうもないので、再入会したAudibleで聴いてみた。お盆の忙しい時期で全く読書が出来ないの…

匂いが命を決める  ビル・S・ハンソン

匂いが命を決める ヒト・昆虫・動植物を誘う嗅覚 ビル・S・ハンソン 大沢章子訳 亜紀書房 図書館本 マックス・プランク化学生態学研究所で、昆虫と植物の匂いによるコミュニケーションを研究している専門家が、一般向けに平易に面白く解説している嗅覚の話。…

わたしは孤独な星のように  池澤春奈

わたしは孤独な星のように 池澤春奈 早川書房 図書館本 無性にSFが読みたくなって、図書館の新着本を探した。初読みの作家さんなのだが、作家の家系でマルチタレントの方なのね。いろいろなテイストの短編が七つ。昔読んだような懐かしい雰囲気のものが多く…

道化者  トーマス・マン

道化者 トーマス・マン 海外ショートセレクション 理論社 木本栄訳 ヨシタケシンスケ絵 図書館本 YA向けのショートセレクションの三冊目はトーマス・マン。『魔の山』は中途挫折、『ブッデンブローク家の人々』は読みたいと思ってから半世紀以上が過ぎた。中…

閉店時間  有吉佐和子

閉店時間 有吉佐和子 講談社 電子書籍 53歳で亡くなった有吉佐和子の没後40年にあたるためか、1962年に出版された小説が復刊されていた。 新宿のデパート「東京デパート」に就職した、同じ高校卒の三人の女性の、仕事と恋愛を描いたものだ。地下の総菜売り場…