壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利  ロバート・バー

十日近く留守にしていたら、庭の花がびっくりするほど成長していました。でも花ばかりか雑草も大繁殖。今のうちに草取りをしておかないと、夏になって大変なことになるのはわかっているのですが、用事が溜まっていて、なかなか手がつけられません。
イメージ 1

ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利  ロバート・バー
平山雄一訳 国書刊行会 2010年 2310円

シャーロック・ホームズと同時代の探偵小説。ロバート・バーはコナン・ドイルの友人で、ホームズ・パロディーもあるそうです。この作品は直接のパロディではありませんが、明らかにホームズを意識したものです。

名(迷)探偵ウジェーヌ・ヴァルモンはフランス警察を首になって、ロンドンで探偵業をいとなんでいるという、尊大で自信たっぷりなフランス人。イギリスの人権思想、イギリスの警察の証拠主義的なやり方に業を煮やして、自宅に牢獄を作って拷問まがいの尋問も辞さないらしい。

(あとがきに、ポアロの原型とも言われている、とあります。)フランス人にイギリス人の悪口を言わせつつ、フランス人とイギリス人の両方を風刺しているようです。扱っている事件は、その大げさな語り口に比べて些細なものなんですが、探偵小説として面白く、古風で滑稽で、ずいぶん楽しめました。

『うっかり屋協同組合』はアンソロジーの中で何回か翻訳されているそうで、そういえば読んだことがあるように思いました。『我輩は猫である』の中で漱石がこの作品に言及しているそうで、そちらで読んで覚えがあるのかもしれません。1906年の作品ですが、この手口は現代だって通用しうる。口座振替で長期分割払いをするときには注意しましょう。

『ダイヤモンドのネックレスの謎』
シャム双生児の爆弾魔』
『銀のスプーンの手がかり』
『チゼルリッグ卿の失われた遺産』
『うっかり屋協同組合』
『幽霊の足音』
『ワイオミング・エドの釈放』
『レディー・アリシアのエメラルド』    (2011年1月読了)