壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

モンテ・フェルモの丘の家 ナタリア・ギンズブルグ

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モンテ・フェルモの丘の家 ナタリア・ギンズブルグ
須賀敦子訳 河出書房新社 世界文学全集I-12 2008年 2800円

「ある家族の会話」では幸せな家族が時代の波に翻弄される姿が描かれていましたが、ギンズブルグ最後の小説「モンテ・フェルモの丘の家」では家族はすでに崩壊し、友人関係が人と人の間を繋いでいました。

ローマ郊外のモンテ・フェルモに住むルクレツィアとピエロ夫妻の周りに集う友人たちが互いに交わす書簡のみによって物語が進行していきます。ルクレツィアとピエロの間には生まれたばかりの息子を含め五人の子供がいます。成人した息子アルベリーコと離れて、一人で暮らすジュゼッペは、一時期だけルクレツィアと友人を超えた関係にあった様子です。そして、アメリカにいる兄を頼って渡米しようと計画しています。

奔放なルクレツィア、浮世離れした裕福なセレーナ、互いに惹かれあっているようなのにすれ違うアルビーナとエジスト、ルクレツィアとイニャツィオの不倫関係などなど、家系図ならぬ人物相関図でも作ろうかと思いましたが、相関図の『関』が別の文字になりそうでやめました(笑)。

アメリカで新たな家庭を築こうとするジュゼッペ、同様にローマで家族らしきものを得ようとしたアルベリーコの身に起こる意外な展開に驚かされました。物語の進行する二年余りの間に、友人たちが集った「モンテ・フェルモの丘の家」は売却されて流行らないホテルになり、登場人物たちの運命も幸福なものとはいえませんでしたが、読了後、懐かしい時代のドラマでも見たような、何かを確かめたような気がしました。