壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

鳥 ダフネ・デュ・モーリア

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鳥 ダフネ・デュ・モーリア
務台夏子訳 創元推理文庫 2000年 980円

むかしむかし「レベッカ」は読みましたが、ヒッチコック映画「鳥」の原作がデュ・モーリアの短編だったことをうかつにも知りませんでした。「桜庭一樹読書日記」で見つけて、どうしても読みたくなりました。やっぱり面白い!じわじわと迫る緊迫感のあるサスペンス、でもそれだけではない雰囲気のあるものばかり。怖過ぎないので、夜に読んでも大丈夫です。

「恋人」 Kiss Me Again, Stranger
映画館でもぎりをしている彼女に一目ぼれした。
ちょっとした謎がなければ単なる恋愛物だけれど、 明示的でない結末もなかなかよい。

「鳥」 The Birds
鳥たちが人間を襲いはじめた。
映画とはかなり違うシチュエーションで結末も別物。主人公が家族なので映画よりももっと怖い。

「写真家」 The Little Photographer
避暑地で退屈している公爵夫人は町の写真家を愛人にした。
オーソドックスなサスペンスだけど、巧みな筆致に引き込まれる。 

「モンテ・ヴェリテ」 Monte Verite
登山家の友人の、美しい妻がモンテ・ヴェリテで消えた。
山頂にある「異界」のような何か、そして語り手の友人の妻に対するひそかな思いが、倒叙形式の展開で語られる素晴らしい作品。

「林檎の木」 The Apple Tree
庭の林檎の古木は亡くなった妻のよう。
亡き妻への嫌悪感と罪悪感がもたらす被害妄想なのか、それとも・・。やはりすごい。

「番」 The Old Man 
湖のほとりに住む爺さんとその妻、そして四人の子供。
最後の四行でひっくり返るので、また最初から読んだ。

「裂けた時間」 The Split Second
未亡人のミセス・エリスが散歩から帰ると,自宅に他人が暮らしていた。
予想のつく展開ではあっても、誰にも信じてもらえない絶望感があまりにもリアルです。

「動機」 No Motive
出産間近の幸せいっぱいの妻が自殺し、動機を探すため夫は探偵を雇った。
探偵が調査するうちに明らかになる女の悲しい過去。ミステリとしてリーダビリティーの高い作品。

もう一冊デュ・モーリアの短編がかなり久しぶりに復刊されているので、続けて読みます。