老眼が進行中の老人に向いている「耳から読書」だけど、忘れそうなのでまとめて記録しておく。散歩中、炊事洗濯掃除中、睡眠導入として、一日約3時間をAudibleに充てている。集中しなくても理解できるライトな小説が聴きやすい。
ラストライン4 骨を追え 堂場瞬一
『ラストライン3』までは読んでいる。典型的警察おっさんミステリ。定年まで10年となった捜査一課の岩倉剛刑事は異常な記憶力の持ち主。それ以外は普通(?)の昭和のおっさん。ほかのシリーズとクロスオーバーしているので、堂場さんの本をある程度読んでいると面白さがわかる。岩倉は、娘が高校を卒業したら妻と離婚することになっていて、20歳も年下の舞台女優と付き合っている。夢のおじさん生活だ。放置された空き地で発見された白骨死体は十年前に行方不明になっていた女子高生のものだった。耳で聞くと読み飛ばせないので、犯人にたどり着くまでの冗長な部分が気になる。犯人わかっちゃうよ。
ラストライン0 灰色の階段 堂場瞬一
ラストラインシリーズのスピンオフで、27歳の岩倉剛が50歳になるまでの短編が6編。渋谷中央署刑事課に任官したばかりの岩倉は27歳で、初々しく一生懸命なのがよかった(手口)。翌日が自分の結婚式なのに、宵の口に起きた事件にわざわざ首を突っ込む岩倉(嘘)。三歳の娘と夏季休暇中なのに逃げるように事件を担当する(隠匿)。勤務時間過ぎても、娘の相手をするのが面倒で警察署から帰らない。奥さんが怒って当然だよ。結婚生活が破綻するのは目に見えている。友人の大友に紹介された舞台女優の頼みでストーカー事件にかかわる(庇護者)。20歳年下の女優さんにデレデレ。
ラストライン5、6が続く。悪口言ったような気もするけれど、警察ミステリもマンネリミステリも嫌いじゃないので、そのうちに聴こう。
図書館のお夜食 原田ひ香
初読みの作家さん。謎のオーナーに誘われて、東京の郊外にある夜の図書館で働くことになった樋口乙葉。給料は安いけど、隣接する古いアパートが宿舎(光熱費だけ自分持ち)で、図書館の食堂の真夜中のお夜食もタダ。一緒に働く仲間はみんないい人。そんな所だったら私も住み込みで働きたい。七十過ぎでは雇ってくれないか。
食堂のメニューは小説やエッセーにちなんでいる。正直そのメニューにはそんなに魅かれなかったけれど、タダなのは魅力だな。有名作家の蔵書を収蔵している博物館的役割を持っているようだ。一般には貸出してくれないらしいので、やっぱり図書館員になるのがいいかも。オーナーの謎はファンタジー、それくらいの経済的基盤がなければ、図書館を維持できない。
小学生の頃(60年以上前)は図書館を知らず、将来の夢を聞かれて「本屋さん」と答えた。店番しながら本を読んでいるイメージ。母親に「どうやったら本屋になれるか」をきいたら、「本屋に嫁に行けばいい」と言われて、夢破れた。
青空の卵 坂木司
坂木司さんのデビュー作。子供時代のトラウマでひきこもりになった鳥井真一と親友の坂木司の謎解きミステリ。ホームズとワトソンだ。鳥井の世話をするために、時間に融通が効く外資系の保険会社に勤めたという坂木。すぐにホロリと涙ぐむ心優しい坂木と、いつもは理性的なのに坂木の涙に抵抗できずに涙ぐむ鳥井。この二人の共依存的関係を何といえばいいのか、親友以上恋人未満? 少年の時の友情が、27歳になってもそのままの形で続いている。セクシャルな場面はないがBL風味。(そういえば、カンバーバッチのシャーロックとフリーマンのワトソンは、ハドソン夫人から二人の関係を誤解されていた。)とても上手だけれど感情移入しすぎの朗読を聞いていたら、ちょっと気持ち悪くなって、続編二冊はいずれまた。鳥井と父親の関係は改善したようだが、鳥井は社会に出ていけるのか、気にはなる。
坂木さんのホリデーシリーズ『ワーキング・ホリデー』『ウインター・ホリデー』『ホリデー・イン』でも、父子関係がテーマだったか。