壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

割れた誇り ラストライン2 堂場瞬一

割れた誇り ラストライン2 堂場瞬一

文春文庫  電子書籍

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シリーズ2作目です。

「事件を呼ぶ刑事」岩倉剛は,定年まであと9年になった。かつて相棒だった新人の伊東彩香は機動捜査隊に移動になり,次の相棒・川嶋は岩倉を執拗にマークしているようだ。隣の北太田署で逮捕した殺人事件の容疑者田岡が裁判で無罪となり,南太田署管内の実家に帰ってきた。しかし周囲の人たちは田岡の無実を信じず,岩倉は次の事件が起きるのではないかと心配している。真犯人は誰なのか? 川嶋は何をしているのか?

 

今回の殺人事件も(ミステリー小説としては)ごく普通?の事件です。事件の真相を追う岩倉の語りで時間通りに進行するので,とても読みやすい。犯人は意外といえば意外だが…いやいや,想定の範囲内です。

 

事件関係は割と平凡なので,岩倉刑事の印象を少し。

岩倉は大学教授である妻と別居中とはいえ,娘が高校を卒業したら離婚することが決まっていて娘とはうまくやっているし,20歳も年下の舞台女優を恋人にもっている。50代で離婚寸前の刑事というのは他のミステリーでもよく出てきて,たいていはさびしい思いをかかえているものだが(?),岩倉は一人暮らしを満喫していて,全然寂しくなさそう。出世も手柄も望んでいないし,定年になったら未解決事件を集めた本を書くのを目標にしていて,うらやましいくらいポジティブ。

唯一の悩みといえば,人一倍の記憶力の源がどこにあるのかサイバー犯罪対策課の実験材料にされそうになっていて,その裏には脳科学者である妻の存在があるらしい。相棒であるはずの川嶋はどうも岩倉を探っているようなのだが,若い恋人との関係を知られたくないこと。 

このシリーズ,岩倉がどんな風になっていくのか,順風満帆にはいかないのではないかと (←シャーデンフロイデ