深追い 横山秀夫
たまに読みたくなる,オジサンミステリ*
*)オジサンが書いた,オジサンが出てくる,オジサンのためのミステリという,わたし的定義です。オバサンが書いた,オバサンが出てくる,オバサンのためのミステリもあります。「オジミス」「オバミス」とも例外の多い定義なので一般化できません。
市郊外に位置する三ツ鐘署は地続きに官舎があって,刑事だけでなくいろいろな職域の警官や一般職員が住んでいる。職住一体の警察組織の中で息苦しく葛藤する男たちの物語。ミステリ的要素はあるけれど警察官たちの人生に触れる部分が多くて,どれも余韻のある終わり方だ。横山秀夫の警察小説はどれも面白い。しかし,自分の読書記録を見ると小説として読んだのはこれが初めてらしい。今まで全部,テレビドラマで見ただけだった。
「深追い」かつて白バイ乗りだった交通課の巡査秋葉は,死亡事故処理中に見つけたポケベルのメッセージの相手が昔の恋人だと知る。
「引き継ぎ」盗犯係の「泥棒刑事」尾花が追うのは,刑事だった父親から引き継いだ手練れの泥棒だった。
「又聞き」鑑識係の三枝は子供の頃の事故のゆえに海が苦手だが,当時の新聞記事の写真から真相にたどり着く。
「訳あり」警務係長の滝沢が出世コースから外れたのは元上司のせいだった。挽回のチャンスが巡って来たとき自分の出世の替わりに実直な老巡査の再就職を願い出た。
「締め出し」生活安全課の三田村が警察官を目指したのは,中学時代に脅された不良「S」が原因だったかもしれない。
「仕返し」警察署次長の的場は,再婚後遅くにできた息子がイジメにあっていると知った。ホームレス変死事件の隠蔽にかかわるうちに…人生の大事なことに気が付く。
「人ごと」会計係の西脇は園芸に造詣が深い。落としものの園芸店の会員証の調査を引き受けたことで,同好の士と出会う。その老人と三人の娘の確執を目の当たりにして…