壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

今昔奇怪録 朱雀門出

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今昔奇怪録 朱雀門
角川ホラー文庫 2009年 540円

2009年日本ホラー大賞短編賞受賞作。ホラーだって読みたいけれど、怖いのはどうも・・・。これくらいがちょうどいいです。どの話も好みでしたし・・。

『今昔奇怪録』
町会館の清掃中に本棚で見つけた『今昔奇怪録』という2冊の本。
現在も編纂され続けているらしい自己増殖的な怪談本に、語り手がとり込まれていく様子がとてもいいです。そういえば、わたしのところも来週の日曜は町会館の清掃のはず。あの二階の隅の本棚を覗くのだけはやめておこうと、本気で思いました。

『疱瘡婆』
疱瘡で三人の娘を亡くした父親の様子が次第におかしくなっていくあたり、冒頭の子猫のシーンと重なって正統的怪談の雰囲気をもつ時代物です。
40年近く前に田舎の祖母が亡くなったとき、その地方はまだ土葬の習慣があって、墓地の地面がズボッと落ち込んでいるのを見かけましたっけ。昔の墓場は怖かったなあ。

『釋迦狂い』
釋迦ヶ嶽という力士をテーマにしたお化け屋敷はアンドロイドやバーチャルを駆使しているのか。 語り手が追い詰められさらに異界に取り込まれるところで、やっぱり携帯電話の充電がなくなるんだよね~・・・手回し充電器を常時携帯すべきでしょう。

『きも』
研究室の培養用恒温器のなかに見知らぬシャーレが増えている。Yamakiというラベルから昔死んだ先輩の名前があがるけれど・・・。
著者はきっと生命科学系の研究者なのでしょう。瀬名秀明『パラサイト・イブ』でも肝細胞が培養されていて当時は脂肪酸合成系の活性を測定していたけれど、15年もたつとSTRをPCRで調べるようになるんですね。
『肝(きも)』は『きも』ち悪いかもしれないけれど、昔は食べるほうは「レバー」、実験で使うほうは「リバー」と日本語で区別したものです(嘘)。

『狂覚(ポンドゥス・アニマエ)』
実験の実験的小説。夢に関する脳科学実験(らしい)。実験のテーマは、「祟りは伝染するのか」ということ(らしい)。
妄想をもつ「被験者」に「干渉者」が間接関与する様子を「観察者」が記録している(らしい)が、その実験全体をさらに「統括者」が取りまとめているらしいが、だんだんに妄想が広がり、観察者も統括者も、もはや客観的立場ではいられなくなってくる(らしい)。