壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

一応の推定 広川純

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一応の推定 広川純
文春文庫 2009年 570円

JR膳所駅轢死した老人。彼には心臓を患う幼い孫娘がいた。死の三ヶ月前に加入していた傷害保険の支払いを巡り保険会社から調査を依頼されたベテラン調査員・村越の執念の調査が始まる。果たして老人の死は事故なのか、それとも自殺なのか? 定年間近の調査員による文字通り足を使った執念の調査行、終盤で二転三転する緻密なプロットはまさに“清張ばり”。選考委員の全会一致で選ばれた、待望の現代推理小説松本清張賞受賞作(文藝春秋HPより)

たしかに清張を思い出させるところがありますが、全体として地味なミステリ。小児の臓器移植問題、バブル時の金融機関のモラルなど社会派としての要素も強調されすぎていません。轢死した老人の家族に対する思い入れに読者がうまく導かれ、保険調査員村越の中立ではあるけれど人間味のあるスタンスが好ましいものに思えます。保険調査に長年携わってきた60歳の新人作家らしい、いい作品でした。









「普通のミステリ」*を読んでやっとバカミスの毒が薄まったので、通常業務に戻れます。

*私にとっての「普通のミステリ」とは、今年米寿の父から、新刊ミステリを数年遅れで貰ったものなので、主に年配の男性が読むタイプのミステリです。