壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

プリーモ・レーヴィは語る―言葉・記憶・希望 プリーモ・レーヴィ

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プリーモ・レーヴィは語る―言葉・記憶・希望 プリーモ・レーヴィ
マルコ・ベルポリーティ編 多木陽介訳 青土社 2002年 2400円

本書は1960年代初めから亡くなる前の年1986年までの対談が数多く集められています。レーヴィにとって語ることは書くことと同じくらいに重要だったようです。もちろん翻訳なので詳しくはわかりませんが、レーヴィの作品の明解さ、わかりやすさはこういう語りにも表れています。さらにレーヴィの語りの主旨は二十数年間ぶれることがなく、首尾一貫していることに気が付かされました。またイタリアのユダヤ人という特殊な状況、信徒ではない(宗教を持たない)という立場などレーヴィの作品を読んでいく上で理解の助けになることでしょう。

『周期律』ですっかり虜になったプリーモ・レーヴィですが、もともと寡作で邦訳されている作品もわずかです。『アウシュヴィッツは終わらない』に関連するノンフィクション『溺れるものと救われるもの』『休戦』フィクション『今でなければ いつ』もだんだんに読みたいと思っています。その他、SF風の短編『天使の蝶』があります。邦訳されていないけれど読みたいのが『星形のスパナ』(原題La chiave a stella)です。ストレーガ賞受賞作品なのになぜ翻訳が出ないのかと疑問に思っていましたが、この作品は主人公の職人ファウッソーネがイタリア語とピエモンテ方言の入り混じった特殊な話し方をするそうで、翻訳しにくい作品のようです。