壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

回転木馬のデッド・ヒート 村上春樹

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回転木馬のデッド・ヒート 村上春樹
講談社 1985年 1400円

かなり昔の短編集ですが、昨今の事情で増刷されたのか、図書館の新着図書棚で見つけました。

『はじめに・回転木馬のデッド・ヒート』納められている物語はすべて、人から聞いた話しを熟成させて文章に移し変えたものだという。

レーダーホーゼン』 妻の友人から聞いた話。両親の離婚の原因は半ズボン(レーダーホーゼン)が買えなかったことにある。

『タクシーに乗った男』 画廊のオーナーの話。NYで出会った亡命チェコ人画家が書いた絵。絵に書かれていた男にアテネで出会った。

『プールサイド』 のカフェで聞いた話。35歳の誕生日を人生の折り返し地点と決めた男。

『今は亡き王女のための』かつてグループに君臨していた女王然とした少女。十数年後に彼女の夫に出会う。

『嘔吐1979』古いレコードのコレクターの話。友人の妻と寝る男に毎日一回かかってくる奇妙な電話と、嘔吐感の関連。

『雨やどり』 雑誌編集者の話。転職中の休暇の間に<商売>をした女。財布の中身がわかるようになった?

『野球場』 原稿を送ってきた青年の話。夢中になった女の子のアパートの近くに部屋を借り、覗き見を始めた。

『ハンティング・ナイフ』閑散とした海辺のリゾートで出会った車椅子に座った青年。そっと持ち歩いているナイフに籠められた思い。

大筋は事実だというこれらの物語は、しかし、しっかりとした村上春樹テイストに味付けられています。「東京奇譚集」同様、ありそうな話とありそうもない話が入り混じり、不思議感がいっそう深まっているようです。