壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

レキシントンの幽霊 村上春樹

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回転木馬のデッド・ヒート』に続き、これも古めの短編集。長い間積読していたのに突然読みたくなりました。どれも面白かった。七編のうち『沈黙』と『七番目の男』は不思議風味がほとんどなく、ストレートな寓意が古めかしい印象を与え、他で読んだら村上春樹とは判らないかもしれません。

どの作品もホラーとは全く違うけれど、読み進んでいる間に期待感でドキドキします。筋運びや言葉使いや間が絶妙なのでしょうか、文章によってイメージや気分が盛り上がり、映像が浮かんでくる感じです。

レキシントンの幽霊』父親の遺品であるジャズ・レコードの膨大なコレクションを持つ男ケイシーと知り合いになった僕は、彼の古い屋敷で留守番をした。夜中に階下からパーティーの気配が・・・・。
♪父親の遺品を一つも捨てられないという、ケイシーの深い孤独が伝わってきます。

『緑色の獣』が家に侵入してきて私に求婚したが、私が思念するだけで獣は傷ついて行き、残酷な場面を思い浮かべると、とうとう獣は消えてしまった。
♪女は残酷だって言いたいのかしらん。でも襲われそうなんだから、それくらい考えてもいいでしょ。

『沈黙』いつも穏やかな大沢さんは、中学時代に一度だけ卑怯な級友を殴ったことがある。しかし、そのあと陰湿ないじめを受けた。大沢さんは「陰湿ないじめを扇動したその級友よりも怖いと思うのは、無批判に扇動される周りの連中だ」だと言う。
♪たとえば痴漢冤罪なんてのは、こういう状況なんでしょうか。

『氷男』と結婚した私だが、南極旅行に出かけたことで・・
♪夫婦関係の何かが決定的に変ったってことかな。

トニー滝谷』(トニー谷じゃないよ)亡くなった妻の膨大な衣類、次に亡くなった父親の膨大なジャズ・レコード、それらを処分して彼は本当に一人ぼっちになった。
♪遺品の始末は大変なんですよ。ホント、どうしたらいいかわからない・・・

『七番目の男』子供の頃親しかった友人Kが、目の前で台風の大波にさらわれた。その時の恐怖と後ろめたさを四十年以上抱えていた。
♪最後に、「恐怖というものに目を閉じずに向き合え」という解説まであって、いかにもわかりやすい。

『めくらやなぎと、眠る女』耳の悪い従弟を病院に連れて行った僕は、高校時代に友人のガールフレンドを見舞った時のことを思い出した。
♪最も村上春樹テイストなので、意味わからないです^^;