白いへび眠る島 三浦しをん
角川 図書館電子書籍
今すぐ読めるという図書館の電子書籍を借りた。著者の本は『舟を編む』『墨のゆらめき』に続く三冊目。
拝島(おがみじま)には古い伝説や因習があり、今でも島の住民はそれを守っている。本土の高校に進学して島を離れた悟史は、高校最後の夏休みに、十三年ごとに行われる島の大祭に帰ってきた。同じ年で幼馴染の光市とは、島の風習である「持念兄弟」同士で深く信頼しあっている。祭りのまえに、「あれ」がでたという噂が広まり、悟史と光市は祭りの夜に島を守るための冒険に出る。
島の大祭の風景は、幼いころに体験した母の実家の田舎のお盆を思い出させる。迎え火が焚かれ、たくさんの大皿料理が並んで、日が暮れると提灯を下げて、遠くの墓地まで皆で歩いていく。その少し前まで土葬の習慣があった墓地の土饅頭が崩れていて、ヒヤッとした。懐かしくて少し怖い思い出だ。
島の排他的な社会に窮屈さを感じて島を疎んじる悟史と、島で一生暮らそうとしている光市の対比がメインテーマの青春小説に思えたのだが、途中から不思議な異界が島を覆いだしてホラーのような雰囲気になる。島を窮屈に思い不合理な考え方を嫌う悟史だが、実は異界の気配が「見えてしまう」体質で、島の風習に疑問を持たない光市は全く「見えない」のだが、悟史の感じる違和感を理解してくれる。
大祭の夜の大冒険は展開が早くてすぐに読み終えたのだが、リアルな部分とファンタジー的な部分の乖離が大きい。村の結界が壊れたことで、大祭でにぎわう集落が暗転して無人の不気味な暗闇になるところに重なるのか。
島の自然と住民の暮らし、島には長男しか残れないという掟、持念石というパワーストーン、など面白い要素はたくさんあるが、主人公の少年が中学生くらいだったらファンタジー風なのに、高校三年生だともっとリアルな展開がありそうに思った。