図書館の予約がいっぺんに回ってきました。期限に間に合うかなあと、ちょっと心配しています。
単行本未収録の短編集ということで、連作短編でないのが残念ですが、ホラー風味のミステリとミステリ風味のホラーが具合よく並んでいます。「葉崎市シリーズ」のようなコージーなものもいいですが、若竹七海さんの真骨頂はこういう作品にあるのかもしれません。ますますファンになりました。
『のぞき梅』亡くなった友人の両親から招待されて、手作りの梅酒ゼリーを手土産に持っていった・・・(実話を思わせる古風な語り口が素敵です。イギリスでは林檎の老木に宿るものが、日本では梅の古木に宿るのかしら。)
『影』友人のKさんの隣にある屋敷の塀に何かのしみがある・・・(これも実話のようになんのひねりも結末もない話なのに、かえってジワッとこわい。)
『樹の海』杉浦圭太という売れない作家が出会った事件・・・(ダメダメな作家の相手をする編集者の心の声がケッサクです。)
『白い顔』不倫をしている身勝手な男の結末・・・(かなり意外なオチでした。)
『人柱』一条刑事の先輩工藤が持ち込んだのは日記・・・(昔の事件に推理をめぐらす二人のやりとりが絶妙です。)
『上下する地獄』テナントがほとんどいない高層ビルのエレベーターで・・・(個人的にエレベーターが怖いので・・モウダメ。)
『ステイ』高校二年の夏休みにバイトした小さな旅行代理店の社長、髪の毛は鮮やかなパロットグリーン・・・・(深層心理の怖さ。西瓜割りができなくなりそう。)
『回来』亡くなった妻の故郷である町を出ようとしたが・・・(どうしても町を離れられないのか、不条理感さえ漂います。)
『追いかけっこ』綾子、剛、雪彦の三人語り。(何が起きているのか、はっきりとは分からないけれど、なんだか不気味。)
『招き猫対密室』古本屋の店先にある招き猫の由来をめぐって・・・・(怪談風味だけれどキッチリとしたミステリ。)
『バベル島』曽祖父である葉村寅吉の日記をたどって、ウェールズ地方の小島を訪れた従兄一樹が事故に巻き込まれた。かの地の領主サー・ジェイムスはブリューゲルの「バベルの塔」を建設しているという・・・・(六十年の歳月を隔てて書かれた二つの日記がうまく使われている傑作です。)
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