いろいろな幽霊 ケヴィン・ブロックマイヤー
『終わりの街の終わり』も幽霊の長編だったが、この短編集は、各話2頁ほどのショートショートが100話。すべて幽霊にまつわる話だが、バラエティがあり過ぎて全体像が掴みにくい。目次では100話が11のカテゴリーに分けられてはいるが、巻末には別のテーマでもっと詳しくカテゴライズされていて、よけいにわからなくなる。一つ一つの話は、面白いもの、ほろっとするもの、理解不能なものなど様々だ。
どういう寓意があるのかを考えていると話を楽しめない。奇譚、お伽噺、SF、ファンタジー・・・などというジャンル分けにも囚われないほうが読みやすいかもしれない。話は面白いが、本全体として何を言いたかったのか、幽霊のように掴みどころのない本だった。表紙のイラスト(各話のイラスト)がかわいい。
100もあるので、印象に残ったものを11のカテゴリーから一つずつ拾い出しておくが、説明不能なものが多くて困るなあ。
幽霊と記憶 四 マイロ・クレイン マイロ・クレインを錯乱させるための嘆願書にサインを迫られる若者の名はマイロ・クレイン。 ♪意味不明なのよ
幽霊と運命 七 ヒッチ・ハイカー 死んだはずの女は、ヒッチ・ハイカーを装った死神に何度も遭遇するが、自分が死んだことに気付かないふりをしている。 ♪逃げ切れるか
幽霊と動物 十四 ゾウたち ゾウたちは仲間の声を聞き分けられる。研究者が、死んだ雌リーダーの鳴き声を録音で仲間に聴かせたら、群れは必死になって探した。後に、群れの中で幽霊譚となって語り継がれた。♪かわいい!
幽霊と時間 二十六 死亡記事 時間に空白ができた。2015年12月20日 9時5分から9時6分の間の1分間。 ♪シュール過ぎてわからないが面白い
幽霊と思弁 三十四 乗客たち 地球に宇宙船団が到着したが、地球の生命はすでに失われていたため、探検隊は引き返した。ところが船団が異常事態に陥り、乗組員は全員脱出した。宇宙船に残ったのは人類の幽霊。 ♪人類は太陽系外に到達したと言えるのか
幽霊と視覚 四十八 いっしょに連れていく 幽霊の仲間が増えるたびにモノクロの世界に彩りが増えてきた。と同時に生者の世界から色が失われていった。♪だからなんなの
幽霊とその他の感覚 五十六 道具学 精神的半身と物理的半身は分離不能だ。物理的半身のとる行動に恥ずかしさを覚える精神的半身、死ぬ以外に二つが離れる道はないのか。 ♪死んでも分離するかどうか分からないでしょ
幽霊と信仰 六十五 携挙 キリストが再臨した時、大地はすべての死者の魂でごった返し、すべての生者は死者の仲間入りをした。再臨は実現したが、全人類は復活しなかった。 ♪お気の毒に
幽霊と愛と友情 六十七 失われて見いだされ 11歳の少年から彼の幽霊が身体から離れていった。巨大な白いゼリービーンズのようなものを捕まえても、もう体の中に入ってくれない。でもずっとそばにいる。 ♪きっと、見守っているんだね
幽霊と家族 八十三 幽霊兄弟 一人は勇敢、一人は憶病な少年二人は生涯を通じて友人だった。一人が死んでも幽霊として守ってあげている。 ♪いい話もある
幽霊と言葉と数 九十六 夕暮れとほかの物語 ポルターガイストには意思伝達の方法が念動力しかない。静かに会話を楽しみたい彼は、一万冊の蔵書を持つ新しい家主に意思を伝えるため、書棚から一冊ずつ本を引き出し、書名をつなげて、コミュニケーションをとった。♪一万冊の蔵書が羨ましい