壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

まるまるの毬 / 亥子ころころ  西條奈加

まるまるの毬 / 亥子ころころ 西條奈加

講談社文庫  電子書籍

読むだけで血糖値が上がりそうな,人情時代物の連作7編です。『まるまるの毬』はじめ,章の名前はすべてお菓子の名前で,どれも食べてみた~い。

和菓子職人の治兵衛と娘お永,孫娘お君が営む麹町の南星屋は,諸国のお菓子を日替わりで商う人気の菓子屋です。治兵衛の出自の秘密は初めの方で簡単に明かされるのですが,それがのちに騒動を引き起こします。とはいえ,家族が互いに思い合って,ほろりとさせられる話ばかりです。お君ちゃんは気の毒だったけれど,立ち直ったみたいだね。

安くて,甘々で,後味のよい,南星屋のお菓子みたいな小説で,ちょっとした塩味も,渋味も,菓子の甘さを際立たせるための隠し味でした。

 

読み終えていい気分のままおはぎを買いに行き,食べながら続編『亥子ころころ』を読み始めました。

治兵衛が左手を怪我して困っているところに,行き倒れとなった菓子職人が現われます。なんと,都合のいい展開でしょう。この雲平という職人の腕がよくて人柄も男ぶりもいいので,南星屋にも動きがあります。雲平が探している弟弟子の亥之吉はどこへ行ってしまったのか?というのがメインテーマですが,次から次へ出てくるおいしそうなお菓子のほうが気にかかります。最後も丸く収まって,めでたしめでたし。まだ続編があるらしく,お君ちゃんにもいい人が現われるかな。

 

西條さんの直木賞受賞作の『心淋し川』を読もうと思ったけれど,図書館の予約が3桁なのであきらめたのが去年。その代わりに読んだ『猫の傀儡』『涅槃の雪』も50%OFFの電子書籍でした。今度の『まるまるの毬』も半額。図書館に行かなくなって,安い電子書籍ばかりを漁っています。だから『心淋し川』には未だにたどり着けない。