ばんば憑き 宮部みゆき
角川書店 図書館本
移動図書館の棚で見つけた短編集。宮部みゆきの時代物を読むのは十数年ぶりです。不思議でほんのり怖くて面白い六篇。宮部さんの描く子供たちに心惹かれます。
「坊主の壺」 江戸も終わりの頃、コロリで親兄弟を亡くした十三歳のおつぎは、お救い小屋を作った田屋重蔵の店に奉公することになった。あるとき重蔵のもつ掛け軸を見たおつぎは・・・
♪自分の運命を覚悟して受け入れたおつぎが健気です。
「お文の影」 子どもたちが遊ぶ影踏みに、余分な影を見出した吉三と佐次郎は、岡っ引きの政五郎に相談した。
♪虐げられた子供を描く筆は厳しいけれど暖かい。『ぼんくら』の政五郎とおでこが登場!! 岡本綺堂の『影を踏まれた女』の影踏みと、『半七捕り物帳』の第一話の「おふみの魂」にどこか繋がる雰囲気です。
「博打眼」 醤油問屋近江屋にやってくる〈あれ〉とは何か。
♪七歳のお美代が可愛い。狛犬の言葉が方言丸出しで面白い。
「討債鬼」 怪異の話かと思ったのにそうではなくて・・・
♪父に疎まれた十歳の信太朗がまたまた健気。手習い所の師匠青野利一郎とわんぱく坊主たちの少年探偵団って、『あんじゅう』に出てきたはず。
「ばんば憑き」 旅先で相部屋になった老女に聞かされた奇怪な話に、佐一郎は己の身の上を重ねてしまう。
♪これが一番怖かったし、心理的描写も巧みでした。
「野槌の墓」 七つになる加奈の頼みで、源五郎衛門は化け猫の頼みをきくことになった。
宮部さんの時代物は本当に面白い。茂七の『本所深川ふしぎ草紙』のシリーズは、代を変えて政五郎へ、さらに先へ受け継がれ、あちこちで登場人物がクロスオーバーしているようです。だいぶ忘れているけれど、それを探すのも楽しそう。