壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

ぼっけえ、きょうてえ 岩井志麻子

イメージ 1


本を売りに行って390円になったので、105円の古本を二冊買いました。年齢とともにホラー耐性ができたようで、こんなに怖そうな本を選んでしまいました。読んでいて青ざめるほどに怖いというわけではないんですが、いわゆる西洋のホラーとは一味も二味も違っています。日本独特の湿度と粘度の高いまとわりつくような怨念にあふれ、どこからか忍び込む隙間風が妙に気になります。読み終えたらまた売りに行きます。105円の本は値段がつかないでしょうが、身近に置いておきたくはないような気がして・・。

遊女と客の寝物語『ぼっけえ、きょうてえ
村に蔓延する虎列刺(コレラ)患者を摘発するために設けられた『密告函』
嫁いだ町の女は漁村に馴染めない『あまぞわい』
雇われた家で牛と一緒に寝ている幼いシズが頼りにするのは出征した兄『よって件の如し』

描かれるのは、明治大正の岡山県を舞台に、貧しさゆえに死と隣り合わせのような生活を送る人々です。飢饉が常態化した貧しい土地で、虐げられ疎まれて差別される人たちがさらに追い詰められていく様はなんとも哀しい。でも妙にエロティックで大人版日本昔話のような作品とでも言いましょうか、凄みのある話でした。