1950年代のダブリンを舞台に、ブッカー賞作家が別名義でミステリに初挑戦した話題作だそうです。原題『Christine Falls』
死体安置所で不審な行動をとっていた義兄マル・グリフィンに疑いを抱いたクワークが、クリスティーン・フォールズという若い女の死因を明らかにしその身元を探るうちに、事情を知っているはずの産婆が殺され、クワーク自身にも魔の手が・・・・。
ジョン・バンヴィルの作品『バーチウッド』『海に帰る日』にも、ミステリとまではいわないまでも作品に仕掛けられた大きな謎がありました。『ダブリンで死んだ娘』の主人公クワークは「聖家族病院」の病理科医長いわゆる検死官なので、典型的なミステリかと思ったのですが・・・そうでもない。事件の関係者はクワークの家族や親類縁者ばかりで、解き明かされる謎も一族の隠された過去でした。
当時のアイルランドを強く縛り付けていたカトリック教会の強い影響力、家父長制の保守的な社会、それに捕らわれた人々の悲劇が全体的に陰鬱な雰囲気で描かれていました。登場人物像はなかなかに複雑で謎がすべて明示的に解決してはいないのですが、ミステリと銘打っただけあって、いままでのバンヴィルの作品よりはずっと読みやすいかな。
Benjamin Black名義の本は『The Silver Swan 』『The Lemur』『Elegy for April』と続々出版されています(Amazon)。最後にクワークと意気投合したらしいダブリン市警の殺人課警部ハケットは、のんだくれで足が不自由で好奇心旺盛なこの病理医と、シリーズでいいコンビになるのかしらね。それにこの先クワークと家族親族との関係も気になります。
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本筋とは全く関係のない話ですが、ボストンに住むクワークの義父ジョシュ・クロフォードがアイルランド移民がボストンの南シチュエートで財を成したのは、カラギーンモス(carrageen moss:別名アイリッシュモス)を商品化したからだと説明する場面がありました。増粘剤カラギーナンに興味があったのでメモ。
本筋とは全く関係のない話ですが、ボストンに住むクワークの義父ジョシュ・クロフォードがアイルランド移民がボストンの南シチュエートで財を成したのは、カラギーンモス(carrageen moss:別名アイリッシュモス)を商品化したからだと説明する場面がありました。増粘剤カラギーナンに興味があったのでメモ。