アクロイドを殺したのはだれか ピエール・バイヤール
大浦康介訳 筑摩書房 2001年 2400円
大浦康介訳 筑摩書房 2001年 2400円
『読んでいない本について堂々と語る方法』ではじめて知ったピエール・バイヤールの、もう一つの著作です。これも、大掛かりな遊戯性を持った、すごく面白い本でした。
クリスティーの『アクロイド殺し』を題材に語る、ミステリ仕立てのミステリ論ですが、テーマがなんと本当の犯人探し。『アクロイド』ばかりか、他作品も徹底的なネタバレですので要注意ですが、『アクロイド』を読んだことのない人だって楽しめるくらい懇切丁寧に解説、引用されているので大丈夫^^。
『カーテン』も『終わりなき夜』もブッチギリでネタバレしながら、精神分析を文学に応用して(ペダンティックに、いや失礼)アカデミックに、不完全な文学テクストを読者が補完することで初めて物語が成立するのだという著者の持論が展開されています。
最終章で本当の犯人にたどり着くまでに、大真面目な、それでいて諧謔に満ちた理論が展開されるので、もうくたくたに疲れ果て、バイヤールが主張するその意外な真犯人に反対するだけの気力も残っていませんでした。
たしかに、その人が犯人ならば整合性が取れているような気にはなります。でも初めて『アクロイド殺し』を読んだ時のあのひっくり返るような驚きは味わえないだろうなあと思いますけど・・・
どこかでネタバレを見かけないうちに、『スリーピング・マーダー』を読まなければ。