壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

ストーンサークルの殺人  M・W・クレイヴン

ストーンサークルの殺人 M・W・クレイヴン

東野さやか訳 ハヤカワ・ミステリ文庫

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厚い文庫本(580ページ)の海外ミステリーを読んだのは,かなり久しぶりです。5日かかってやっと読了。花粉のため目がショボショボでしたが,面白くて読むのをやめられませんでした。昨年9月に出版された本なので,あまりネタバレしないほうがいいですね,あらすじはほどほどに…。

湖水地方に点在する先史時代のストーンサークルで凄惨な遺体が見つかった。国家犯罪対策庁重大犯罪分析課(NCA)の停職中の刑事ワシントン・ポーの名前が遺体に刻まれていたため,ポーは捜査に呼び戻され分析官のティリー・ブラッドショーと共に連続殺人犯を追いかける。

独自の捜査方法を持つため上層部とは折り合いが悪いポーは,降格されて元部下の女性フリンの下で働くことになるのですが,そんなことはあまり気にしてないようです。天才的な数学的分析力を持ち現実的な適応力に欠けたところのある分析官のティリーですが,ポーはそういう彼女に可能性を見出し,いじめにあっている彼女を助けて捜査現場に引っ張り出しています。このあたりから,ポーが本来持っている強い正義感をうかがうことができます。また同時に警官なのに職務をこえて事件と深く関わりすぎるところが危うい所でもあり,面白い所でもあります。

 ポーが事件の証拠をとことん調べるのにティリーの理詰めの素早い情報処理能力が欠かせませんが,ポーはその情報を見直し,直感的に独自の視点を加えて解決に近づいていきます。アナログなポーの直感とティリーのデジタル解析。世間的にははみ出し者の二人が捜査で互いに補完しながら友情を築いていく様子がなかなかいいですね。二人の関係は今後どうなるのか… 個人的にはすぐに恋愛関係とかにはならないことを期待しますよ。 BONESだって,初期のブレナンとブースのほうがずっと面白かったもの。

事件の方は,なぜこんなに凄惨で残虐な連続殺人が行われるのか,シリアルキラーではないらしいことがだんだんにわかってきて,その犯行動機がもっとも肝心な点なのですが…ネタバレなしで…犯人が特定された後に,さらにもうひと山もふた山もあって,緊迫した場面がずっと続きます。

上役の言う通りにならない刑事も,警察組織が権力の中枢に弱いのも,面白いコンビによる捜査も,警察ミステリーの常套手段ではありますが,それを越えて面白い本でした。犯人の意図は権力によって握りつぶされてしまうのか! ポーの逆襲やいかに  …証拠が! 証拠が!…  ああ面白かった!

この本を送ってくれた友人に感謝。