壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

秋の牢獄 恒川光太郎

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秋の牢獄 恒川光太郎
角川書店 2007年 1400円

「夜市」 「雷の季節の終わりに」 につづく三作目です。前作同様、異界に迷い込みとらわれてしまった者たちの物語。閉ざされた牢獄である異世界にいつの間にか愛着を覚え、日常に戻ることをためらってしまう。異界がなぜか懐かしい場所になっているのがとても不思議です。

ただ三つ目の「幻は夜に成長する」はダークな部分が多くてノスタルジックとはいい難いのですが、それはそれで良い作品だと思います。「雷の季節の終わりに」では悪役の造りが弱かったですから。二時間ほどで読んでしまう量なのに、目の前に鮮やかな映像を浮かび上がらせる描写はあいかわらず巧みです。

「秋の牢獄」11月7日から出て行くことができない女子大生の藍。何度も繰り返す同じ日に知り合った仲間たちとの不思議に楽しい時間。

「神家没落」見たことのない古民家に迷い込んだぼくは、翁の面をつけた老人の代わりにこの家の家守となった。各地を移動する不思議な家から出る方法は一つ。

「幻は夜に成長する」攫われて幻を見せる能力を受け継いだ少女はその力をどのように使うのか。捕らえられた教団から逃げ出さないのはなぜなのか。