壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

扉のむこうの物語 岡田淳

イメージ 1

扉のむこうの物語 岡田淳
理論社 2005年 1600円

子供の日常から異世界に通じる扉は、小学校の倉庫にありました。1988年に赤い鳥文学賞を受賞した作品ですが、最近になって復刊されていました。挿絵も小学校の図工の先生だったという著者の手によります。

小学六年生の行也は小学校の先生をしているとうさんと二人暮し。冬休みも終わろうとする頃、とうさんの学校の倉庫で、扉だけの扉、ピエロの人形、トーテムポール、大きなそろばん、オルガン、五十音表、迷路の絵・・・・いろんなものをみつけました。宿題の「物語を作る」ための題材にしようと考えていると、そこに現れたのは喫茶店のママです。この小学校の卒業生だったらしいのです。

下駄箱が倒れたはずみで倉庫に閉じ込められた二人は、物語の筋を考えながらとうさんが倉庫に戻ってくるのを待ちました。ところが、部屋の隅に立てかけてあった扉だけの扉を開けたとき、不思議な世界に迷い込みます。倉庫にあった道具たちが姿を変えて現れる世界から、二人は元の世界に戻れるのでしょうか。時間さえもねじれて、喫茶店のママが六年生の千恵に戻っています。

魔法の力でピエロが支配する世界では、新しく来た者はすべて「分類」されて決まったことしかできなくなります。でも、「分類」されれば余計なことは考えずにこの世界がいいところだと思うようになるのです。ピエロと友達になった行也と千恵は、この世界の人たち皆を救い出すための方法を探します。

人間の心の自由とは何か、人を思いやる気持ちの大切さなど、子供の頃に読んだらもっと新鮮な気持ちで深く味わえたことでしょう。でも、不思議な世界と少年が創作した物語と、さらに現実の世界とがうまくつながっていて、手ごたえのある読後感でした。

久しぶりの児童文学でした。今は社会人の娘が子供の頃に大好きだった本で、今頃になってクリスマスプレゼントにしようと購入しました。で、娘の許可を得て先に読ませてもらいました。

イギリスのファンタジーだったら異世界への入口は大きな屋敷のドアやワードローブですが、日本の家屋には秘密の扉は少ないようで(笑)、校舎の隠された部屋が入口なんだなあ。