壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

テムズ川の娘  ダイアン・セッターフィールド

テムズ川の娘  ダイアン・セッターフィールド

高橋尚子訳 小学館文庫  電子書籍

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19世紀のイギリス,テムズ川で仮死状態で見つかった少女の身元をめぐる人々の物語。その少女は裕福な実業家の行方不明の娘なのか,複雑な出自の黒人農園主の孫なのか,牧師館の家政婦の妹なのか。それぞれの家族や人物の物語が,あちこち行き来しながら,ほんの少しずつ明らかになっていくが,次にはそれを塗り替えていく物語が語られ,複雑に絡み合う。物語がどこに向かっていくのか予断を許さないので,途中までは読むのが大変だった。しかし,謎解きに重要な仕掛け―幻灯機によるファンタスマゴリーあたりからは畳み込むように謎が明かされて,ミステリ的な要素もさることながら,登場人物たちの愛や葛藤を充分に堪能でき,長かったけれど,読後感が素晴らしかった。

 

テムズ川を見たことはないけれど,英国の小説やミステリドラマのファンであるわたしにはおなじみの存在です。『ボートの三人男』は元々テムズを紹介する紀行文でもあったとか。テムズ川周辺の美しい風景も楽しめました。しかし,長かった。お正月をまたいで一か月読み続けた長い長い物語でした。文庫本で700頁は重くて読むのも大変でしょうね。私はポイント半額につられて買った電子書籍だったので腕は痛くならなかったけれど,寝ながらKindleを読んで顔の上に落ちてくると痛いので,この頃はスマホホルダーに挟んでいます。