壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

箱舟の航海日誌

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箱舟の航海日誌 ウォーカー
安達まみ訳 光文社古典新訳文庫 2007年 552円

図書館の新刊コーナーで見つけた未知の本でしたが、ちかごろ話題になっている「光文社古典新訳文庫」なので読んでみました。ケネス・マクファーレィン・ウォーカーはイギリスの医者にして文筆家。1923年に書かれた本書が唯一の児童書だそうです。

イギリスでは児童書として版を重ねているそうです。架空のものを含め、いろいろな動物が出てきて楽しいのはたしかです。本書は大人の読者も視野に入れた翻訳にしたとのことで、大人もまあ楽しめました。

洪水が来る前の世界は清浄無垢で、動物たちは果物と草を食べて暮らしていました。トラは落ちている果物を食べ、ワニの好物はメロンでした。雨が降り出して動物たちがノアのつくった箱舟に乗り込んだ後も、オートミールを食べて、動物たちは楽しく仲良く暮らしていました。

いつのまにか、スカブという誰も知らない動物が箱舟に紛れ込んでいました。禁断の肉食を知り、邪悪の目をしたスカブはひそかに、大きな動物の不満をあおり、小さな動物たちの不安を掻き立てていきました。洪水は予想以上に長引き、箱舟の中に焦燥と不満が広がりました。洪水が終わって動物たちが地上に戻りましたが、以後の世界は清浄の地ではなかったのです。

この含みの多そうな物語の寓意をあれこれと考えながら楽しんで読みました。しかし、巻末の訳者安達まみさんの解説をよんだら、あまりに素晴らしく明解に解説されていて、自分のつたない思考をあれこれ玩ぶ愉しみは無くなりました^^;。