さよならの儀式 宮部みゆき
河出書房新社 図書館本
表紙に8 Science Fictions Stories とあります。宮部みゆきのSF短編集。SFとはいえハードなものではなく、どこかで出会った懐かしい感じの、(S)少し(F)不思議な物語でした。人の心の奥底を書いているのにすらすら読みやすく、読み終えてみれば心の奥がざわつきます。
最初の「母の法律」と六話目の「聖痕」は、児童虐待をテーマにしたもの。…法律でも防ぎようのない問題に、リアルな解決法があるのだろうかと、いろいろ考えさせられた。
孤独な80歳の老人は日課の散歩で異常を感知し「戦闘員」として覚醒した。…そういえば、散歩の途中の住宅街でも監視カメラを見ることが多くなったが、私はもう戦えない。
タイムスリップして過去の自分と出会った「わたしとワタシ」。…できたら出会いたくはない。
長い間一緒に暮らしてきたロボットと別れる「さよならの儀式」。…人型ではない掃除ロボットにも愛着は生まれて、掃除終了の合図の度に〈ありがとう〉と言ってしまうのよ。
「星に願いを」:10歳年下の妹を世話する姉がけなげ。
「聖痕」:宮部みゆきらしい展開。
「海神の裔」:『屍者の帝国』の明治日本版。元ネタを読んでないとわかりにくい。