壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

四人組がいた。  髙村 薫

四人組がいた。  髙村 薫

文藝春秋   図書館本

髙村さんの本を久しく読んでいなかった。寡作で、図書館の予約でいっぱいの人気の新刊は借りる気になれず電子化もされていない。この頃は、遠い図書館に行くのが億劫になっている。だから今世紀に入ってからは全く読んでいない。先日、たまたま通りかかった移動図書館の車で『四人組がいた。』を借りた。10年近く前の本だが、読み始めてびっくり! 硬派・社会派の小説ではない。ユーモア小説のような始まりだが、黒い笑いに満ちた痛烈な社会批判でもあった。

 

市町村合併された村の限界集落にある郵便局は集会所も兼ねている。暇を持て余した老人四人が、日がな一日、茶を飲みながら駄弁っている。元村長、元助役、郵便局長、キクエ小母さんのしたたかな四人組のところに持ち込まれる出来事は、回を追うごとに奇想天外になっていく。人間ばかりか、山のタヌキやそのほかの四つ足、さらに地球外生命体も登場して、ブラックユーモア、やりたい放題のスラップスティックだ。(悪名高いあの四人組ほどではないが)。

だが、根底には現代社会に対する強烈な皮肉と批判がある。村おこしのためにはじめた「気球の里」という怪しげな観光事業、タヌキ娘が勧誘するボッタクリ生命保険、おためごかしの養豚教育、うろんな健康食品、アンチエイジング、自分探し、パワースポットブーム、少女アイドルグループ、新興宗教、やらせTVドキュメンタリなどを題材に、巧みなストーリーと圧倒的話術で現代の歪んだ世相に突っ込みを入れている。

少子化対策として、使われなくなった村役場を使い、幼児を集め暇な老人たちにボランティアをさせるという保育所は〈すこやか&ポックリ苑〉。TNB48という少女アイドルのステージでは子狸たちの化けの皮がはがれた。長寿社会で暇になった地獄と極楽に招待された四人組の行く末は・・・

 

髙村さんの他の本を読みたくなって、合田刑事の『冷血』と『我らが少女A』を図書館に予約した。再来週の移動図書館に持ってきてもらえるはず。Audibleが二か月で99円というので、聞きながら本を読むというのやってみよう。

文字は読む方が得意。耳から聞くだけだと、頭の中に文字が浮かんでディクテーションになって、ストーリーが把握できない。そして、すぐ眠くなる。

でも練習すれば、聞き取りが出来るような気がする。もっと歳をとって字が見にくくなった時に便利かもしれない。でも、その頃には、耳も遠くなっているかも・・・・嗚~呼。