壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

82年生まれ、キム・ジヨン  チョ・ナムジュ

82年生まれ、キム・ジヨン  チョ・ナムジュ

斎藤真理子訳 ちくま文庫  Kindle

2016年に韓国で出版され大ベストセラーになったという。邦訳もベストセラーとして話題になった本が文庫化され、やっと読むことが出来てよかった。

1982年生まれのキム・ジヨンという、ごく普通の女性の誕生から、学生時代、就職、結婚、出産、育児というごく普通の人生を描いている。女性が生きていく中で受ける、差別、重圧が具体的な事例として書かれたノンフィクションのような小説だった。私はキム・ジヨンの母親の世代で、82年前後に生まれた娘たちがいる。でもこのキム・ジヨンは私だ、私の娘たちだと強く感じた。

70年間も女をやってきていろいろなことがあった。すっかり忘れていたはずの事を思い出した。何でこんなことを言われなければならないのか、どうして状況を変えられないのかと、当時の悔しい思い、情けない思いが胸を突き上げて、涙が出そうになった。この歳になっても嫌だった事を覚えていたことに、びっくりした。

韓国と日本では違う面もあるだろう。女を取り巻く状況は少しずつ変わってきているのかもしれない。でも見えない差別はたくさんある。男には見えないものがあるし、長い間抑圧されてきた女の中の自覚していない固定観念もあるだろう。平凡な女の人生を描いた短い小説の中で、自分がこれまで言葉にできなかった違和感や感情がうまく描かれていた。

映画化されている。アマプラで見よう。