壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

かばん屋の相続  池井戸潤

かばん屋の相続  池井戸潤

文藝春秋   Audible

家事炊事をしながら、Audibleで聴いた。池井戸さんの小説は耳からの読書に耐えるわかりやすさと面白さがある。池井戸作品を文字では読んでいないが、今までに『ハヤブサ消防団』『半沢直樹』を聴いて楽しんだ。

本書は短編集。六つは独立した短編で、視点人物が銀行員、融資先は中小企業、登場人物はステレオタイプだ。だからこそわかりやすいのだろう。各話の結末は明確な解決がないオープンエンディングもあるが、ストーリーの密度が濃く十分に満足したので、これ以上銀行の話はいらないかな。

 

耳からの読書は固有名詞がよくわからないのでメモを取りにくい。

十年目のクリスマス」:クリスマス商戦のデパートで見かけた裕福そうな男は、十年前に火災で倒産した会社の社長だった。この十年に何があったのか。

セールストーク」:ある会社からの融資を断った融資係の銀行員。その会社の社長が別口で五千万円の資金を調達した。個人からの融資だというが本当なのか。

手形の行方」:部下の若手行員が一千万円の手形を紛失した。しかしその若手は真剣さに欠け、「そのうち出てくる」みたいなことを言う。

芥のごとく」:小さな鉄工所を長く営んできた女社長の苦闘とそれを支えようとする若手銀行員の話。これが最も迫力があった。

妻の元カレ」:妻の元カレが契約社員からベンチャー企業の社長になったという噂を聞く銀行員。妻の行動に疑問を持つが、何も聞けない。

かばん屋の相続」:創業者の父親は亡くなる前に、大手都市銀行に勤める兄に株式をすべて遺し、かばん屋を継がせようとした。それまでかばん屋を手伝っていた弟は相続放棄したのだが・・・。どっかで聞いたような話なんだけど・・・。