壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

破砕  ク・ビョンモ

破砕  ク・ビョンモ

小山内園子訳  岩波書店  図書館本

爪角〈チョガク〉という65歳の女がプロの殺し屋として描かれた『破果』の外伝らしい。冷徹な殺し屋として過ごした長い年月の果てに、彼女は自分自身の肉体と精神に衰えを感じながら、一人で生き抜こうとする話だった。殺し屋として生きなければならなかった過去も語られていたが、本書『破砕』では、彼女が若いころにプロになるための訓練を受けた様子が、硬質な長文で描写されている。

たぶん爪角は十代後半なのだろう、自分を捨てて殺し屋として生きる覚悟をし、師と仰ぐ男とともに山に籠って壮絶なゲームを始める。緊迫した場面の中で、プロとして生きるための思考を学び取っていく。ギリギリの命のやり取りのような訓練の中で、師として仰ぐ男への思慕も言外に感じられる。短編ともいえる短い話なのだが、迫力は充分だ。ただ、戦闘シーンが苦手なので、頭に浮かんでくる映像がこれでいいのか?と迷う。

邦訳されているク・ビョンモの作品は少ない。『四隣人の食卓』が面白そうなので、図書館に予約を入れた。