壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

鳥肌が  穂村弘

鳥肌が  穂村弘

PHP文芸文庫  電子書籍

インパクトのある表紙で、「ジャケ買い」しました。電子書籍だってジャケ買いすることはあります。初読みの作家の作品なので、すごく怖いホラー小説だと思い込んでいました。歌人にしてエッセイストの作者にはたくさんのエッセイがあり、その一冊だったのですが、日常の何でもない事の中にある怖さが伝わってきました。

日常の何気ない風景の中に感じる『鳥肌が』立ちそうな、小さな違和感、不安感、焦燥感を作者の独特な感性で拾い上げる話が40編もあります。

「次の瞬間」:電車のホームの列に一番前にはなるべく立たない」ようにしているという話。「小さな子供と大きな犬が遊んでいるのをみるのがこわい」話。

「他人に声をかける」ことにハードルが高いという感覚。などなど

こういうネガティブな感覚を持っている人が他にもいるのだ!わかる、わかる! という強い共感を持ちました。田舎には電車はないのですが、車の行き交う交差点からは、なるべく離れて立つようにしている私は、作者の母親のように、TVのスポーツ番組に対して、スポーツの魅力ではなく、ネガティブな側面に真っ先に意識が向かうタイプの人間です。そういう人が他にもいるんだなあ、と安心しました。(だからスポーツ番組は見ないの)

作者の軽妙な話の運びや言葉遣いの魅力にのせられて、笑いもあり楽しく読みました。引用されている短歌も、怖面白い