壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

パレード 吉田修一

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パレード 吉田修一
幻冬舎文庫 2004年 560円

マンションの一室で共同生活を送る男女四人。親しそうに見えるけれども、善意のうわべだけでホンネでは付き合わない、奇妙なバランスができている。そこにサトルが加わっった。

杉本良介:21歳・H大学経済学部3年・現在、下北沢のメキシコ料理店でバイト中。
大垣内琴美:23歳・無職・現在。若手人気俳優「丸山友彦」と熱愛中。
相馬未来:24歳・イラストレーター兼雑貨屋店長。現在、人生を見つめて深酒中。
小窪サトル:18歳・自称「夜のお仕事」に勤務。現在、無駄な若さを切り売り中。
伊原直樹:28歳・インディペンデントの映画配給会社勤務。現在、第54回カンヌ映画祭パルムドールの行方を予想中。

一章ごとにこの五人が順番に語るうちに、共同生活の中身が見えてきます。成り行きで集まってきたさまざまな五人。平凡な若者たちの退屈な日常を語っただけの話のだったのに、最後に足をすくわれました。・・・・そうか、みんな知ってたんだ・・・・。もう一度読み返して確かめたいような気がしました。

作者の語りによって、平凡な若者たち、退屈な日常に確かなリアリティーを感じます。『さよなら渓谷』ではちょっと割り切れないところがあって、他の作品を読んだことがなかったけれど、吉田さんの作品は読み応えがあります。ペンディングになっていた『悪人』を読もう。