壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

喋る馬 バーナード・マラマッド

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喋る馬 バーナード・マラマッド
スイッチ・パブリッシング 柴田元幸翻訳叢書 2009年 2100円

『レンブラントの帽子』でマラマッドに心惹かれて、二冊目はこの短編集。『ユダヤ鳥』は昔読んだことがあって、そのときはあまりよくわからなかったのですが、この短編集で他の短編とともに読んだことで、少し理解できたかもしれません。

どれも、貧しいユダヤ人移民たちの話です。ニューヨークの片隅で、移民たちがどんな思いを押し込めて暮らしているのかが、簡潔な物語から伝わってきます。苦しくてやりきれない状況が描かれるのに、どこかにユーモアとペーソスがあるのはなぜなのでしょう。時に不条理であったり、幻想的な昔話のような味わいだったり、心打たれて切ない、哀しくて可笑しい物語です。

『最初の七年』 貧しい靴屋は、19歳の娘の結婚相手として学問のある男を望んでいたが・・
『金の無心』小さなパン屋のリーブのところに古い友人が金の無心に来た。なけなしの金を貸そうとするリーブに妻は・・・★妻の気持ちもわからぬではないが、やるせない。
ユダヤ鳥』 アパートに住むコーエン一家に迷い込んだのは、イディッシュ語を話す汚らしい鳥。その厚かましさに・・・
『手紙』毎週、父親の見舞いに行くニューマンに、何も書いていない手紙を出してくれと頼む患者がいる・・・
『ドイツ難民』大学生の僕は、ドイツ難民に英語を教えている。ジャーナリストであったオスカーは大変な苦労の末に、勤め先の研究所での第一回目の講義を成功させた。しかしその二日後・・・ ★ストレートな感動をもつ物語。しかしなんともやりきれない。
『夏の読書』 16のときに高校をやめて以来ずっとぶらぶらしているジョージは、理解をしめしてくれたミスター・カタンザーラに、読書をしていると嘘をついてしまった・・・★叙情的な余韻がある。
『悼む人たち』 元卵選別士のケスラーは一人暮らしの年金生活者。トランプゲームで彼に負けたアパートの管理人イグアスに、理不尽にも憎まれて・・・・
『天使レヴィ―ン』不運にみまわれた仕立て屋のマニシュヴィッツの前に現れたのは、黒人のユダヤ人だった。彼は自分を天使だと言う・・・
『喋る馬』サーカスで人間のように喋る馬アブラモウィッツは、自分は馬の中に閉じ込められた人間だと主張する。 聾唖の飼い主ゴールドバーグは、余計なことは考えるなとモールス信号でいう・・・・・★サーカスでの芸も面白いが、結末はかなり奇妙。でもこれ以外に救いはあるのか・・・
『最後のモヒカン族イタリアにジョットを学びにやってきたファイデルマンは、ススキンドという貧しいユダヤ人に付きまとわれ、金銭や衣類を無心される・・・★このあと ファイデルマンはどうなるのか・・・短編集『フィデルマンの絵』を図書館で借りました。
『白痴が先』死にかけた父親が、なんとか金を工面して障害を持つ息子を親戚に預けようとしている・・・★ここに出てくるギンズバーグって誰?死神?