壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

レンブラントの帽子 バーナード・マラマッド

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レンブラントの帽子 バーナード・マラマッド
小島信夫・浜本武雄・井上謙治訳 夏葉社 2010年 1680円

あちこちで紹介されていて、小さな出版社の第一冊目ということなので、珍しく購入しました。マラマッド、もう少し読みたいので、『喋る馬』の方は図書館で借りましょう。

レンブラントの帽子』美術学校の同僚の二人、美術史家アーキンは彫刻家ルービンがかぶっていた帽子について、何気ない一言をもらしたのがきっかけなのか、どんどんと行き違いが進んでしまう。ゆがんだ鏡同士を向かい合わせにしたように進行する行き違いを、美術史家アーキンの視点で描く、心理描写の妙。説明されないところに深い含蓄がある。

『引き出しの中の人間』ソビエトを旅行中のユダヤアメリカ人ハワードは、タクシー運転手をしている自称小説家のユダヤ人レヴィタンスキーに出会う。ソビエトで出版できないという短編を預かるハワード。当局に摘発されるのではと、うろうろする二人。なんだかスパイ小説でも読んでいるようなスリルがあって可笑しい。預かった四篇の短編小説に、ソビエトでのユダヤ人の閉塞的状況や哀しみがそれとなく描かれている。

『わが子に、殺される』引きこもった息子を心配する父親。行き詰った状況を変えることのできない父親の心情が描かれる。