壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

患者の孤独 柳澤桂子

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患者の孤独 柳澤桂子 
草思社 2003年 1300円

知り合いの方に久しぶりにお目にかかりました。実は具合が悪くて臥せっていらしたとの事、身体に痛みがあるのに医者にかかっても原因がわからないのだそうです。たぶん苦しいでしょうに元気そうに振舞っていらっしゃるその方の様子に、病名がわからないままに三十年も苦しんだ柳澤桂子さんのことを思い出しました。

苦しくて病院にいっても、「病気のはずがない」という医師の心ない言葉に余計傷ついたという経験が、生命科学者でもある著者の冷静な言葉で語られています。専門領域の病気にしか詳しくない大病院の医師たち、患者を下に見る尊大な態度、精神科領域の病気に対する無理解など、当時の病院の様子があまりにひどくてびっくりしました。

こういう本が世に出ることも大いに助けになったでしょう。私の三十年近く前の入院(お産なので病気ではないのですが)経験と最近の病院の様子を比べると、患者サービスもかなりよくなっていますし、インフォームド・コンセントも行われるようになりました(形式的過ぎるきらいはありますが)。総合診療科(いわゆるドクターG)の新設、心の病に対する理解など、その現状は少しずつでも改善されていると信じたいですが・・・・。でも患者の権利が主張できるようになったとしても、病気になれば患者が頼れるのは病院や医師です。患者の心に寄り添った医療は本当に大事ですね。