壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

いずれは死ぬ身 柴田元幸編訳

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いずれは死ぬ身 柴田元幸編訳
河出書房新社Modern & Classic 2009年 2200円

柴田さんのアンソロジー。「いずれは死ぬ身」という題名から連想されるものよりもずっと、ゆるいユーモアのあるものが多い。一つ一つはそれぞれに面白くても、バラエティーに富みすぎていて、全体として散漫な印象でした。

『ペーパー・ランタン』 スチュアート・ダイベック
   僕たちが中華料理店で食事をしている間に、タイムマシンの研究室が火事になった。そこから昔見た火事の回想がはじまるという取りとめのない話なのに、何か独特な雰囲気があってわりと好み。
『ジャンキーのクリスマス』 ウィリアム・バロウズ
   クリスマスを前に釈放されたジャンキーのダニーはヤクを求めて街をうろつく。最後は神の恩寵が下るというわけかしら。
『青いケシ』 ジェーン・ガーダム
   91歳の母を連れて青いケシを見に行く。ちょっとボケているけれど、鋭いところのある母との会話がおかしい。
『冬のはじまる日』 ブリース・D'J.パンケーク
   老いた両親を抱えた貧農のホリス。どうしようもない生活のやるせなさ。
『スリ』 トム・ジョーンズ
   糖尿病で片足を失くしたスリの独り言
『イモ掘りの日々』 ケン・スミス
   なんだかよく分からないけれど、イモ掘り史観?
『盗んだ子供』 クレア・ボイラン
   スーパーで万引きついでに赤ん坊を盗んだ女の手前勝手なぼやき。
『みんなの友だちグレーゴル・ブラウン』 シコーリャック
   コミック。カフカのようなピーナッツ(シュルツ)。
『いずれは死ぬ身』 トバイアス・ウルフ
   間違って死亡記事を書いてしまった僕は解雇された。でも、それを書かせたのは・・・。
『遠い過去』 ウィリアム・トレヴァー
   アイルランドに住むイギリス寄りのミドルトン兄妹。周囲の経済状態が良い時期にだけは、良い関係が保たれていたのに・・。ずっしりと重みのある作品でした。ダントツに巧い。
『強盗に遭った』 エレン・カリー
   宝石店に強盗が入ったことで、常連客と店主の関係がだんだん明らかになる。展開が面白い。
『ブラックアウツ』 ポール・オースター
   あとがきによれば、『幽霊たち』の原型ということだけれど、なんだかよく分からなかった。不条理風?の戯曲は苦手。
『同郷人会』 メルヴィン・ジュールズ・ビュキート
   ユダヤ系移民の会。三十年前、友人アレグザンダーの墓の前で踊るという軽口を叩いたピンカスは、とうとうその場面に直面する。
『Cheap Novelties』 ベン・カッチャー
   コミック。不思議なペーソスのある雰囲気。
『自転車スワッピング』 アルフ・マクロフラン
   並列して全力疾走する自転車を乗り換える遊びの最中に一瞬記憶を失ったことがある男は、その時の友人を見舞う。末期がんで余命わずかな友人は未来を語り、男は過去(の一瞬の記憶喪失)の真相にのみこだわる。
『準備、ほぼ完了』 リック・バス
   巨大ななまずを釣り上げる老人とそれを観察するスポーツ欄担当の新聞記者。長期の根競べの意外な最後。
『フリン家の未来』 アンドルー・ショーン・グリア
   イタリアン・レストランで食事するフリン家の人々。双子の男の子がへんに面白い。

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半月以上も前に読み終えていたので、もう忘れかけていました。感想は読んだらすぐに書きとめておかないとダメですね。やっとメモを作っても、ブログにアップするのに、また何日もかかるという低調な日々です。

夫の葬儀から二ヶ月経ち、いろいろな手続きもだいたい済みました。落ち着いてきたはずなのに、まだ頭の中がゴチャゴチャしています。それ以外は元気なのですが、まとまって本を読むことができません。集中力が長続きしないし、文章からイメージを喚起する力がかなり落ちています。字面を追っているだけの読書はあまり楽しくないのですが、でも活字中毒なので読書から離れることはできません。

それに、「この本を是非読みたい!」っていう気持ちが湧いてこないので、「ブログ引き籠り」しています。こんな時は短時間で読める娯楽小説が適しているでしょうが、それだけでは満足できないし、かといって重めの文学作品は手に負えないし・・・と、どれもこれも読了できずに、あちこち読み散らかしています。未読の本を読むよりも、再読の方が読み易いかもしれません。