壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

アーサー・ランサムのロシア昔話 アーサー・ランサム

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アーサー・ランサムのロシア昔話 アーサー・ランサム
フェイス・ジャックス絵 神宮輝夫訳 白水社 2009年 2500円

たまには、子供に戻ったような気持ちになって昔話が読みたくなります。昔話の基本パターンは万国共通のものがあるけれど、国や地方によってその風合いが異なるところがいい。

ランサムの再話によるロシアの民話や昔話。ランサムはロシアへ行って言葉を学び、みずから昔話を収集したもので、これは第二集だそうです(第一集は「ピーターおじいさんの昔話」。)生の民話にあるような冗長さはなく、すっきりとまとめられているので、読みやすくて面白い。全体に話のトーンは地味でペシミスティックな風合いのものも含まれているけれど、庶民の底力のようなものが感じられます。



「鳥とけものの戦争」鳥もけものも一緒に地上に住んでいたころに両者の間に争いが起こったという動物譚がイワンの嫁取り話につながっていく。(いつも昔話の中では、なんで三番目の娘がよい娘なんだろうか。)
「白鳥の王女」鶴の恩返しと羽衣伝説を一緒にしたような話。
「オメリヤとカワカマス」これも動物の恩返し。(ロシアの川にはさぞ大きなカマスがすんでいるんだろうな。)
「高価な指輪」形見の指輪をあらそう若い三人兄弟。(、お姫様じゃなくて年取った女房と義理のおっかさんをしょいこんで、最後には指輪を失い元も子もなくなるのだが、この挿絵は迫力ある。)
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「キツネ話」三つのキツネ話。ジャッカルも悪魔もキツネにだまされる。王女の出す難題をもキツネが解決。(キツネはどこでも賢い。)
「貧すれば貪するという話」三つの願いのような話。(欲張るとすべてを失うという教訓は、強く刷り込まれているなあ。)
「小さな家畜」ハーメルンの笛吹きのような話だけれど、聖ニコラスは子供たちを連れてはいかない。
「ジプシーと聖ジョージ」聖ジョージがジプシーに騙される。
「天国のかじや」人のいいかじやが天に召されて、神の苦しみを知る。
「兵隊と死神」死神を封じることによって不死になった兵隊の話。
「二人の兄弟」死んだ兄の墓を訪れた弟イワン。気が付けば三百年の時が過ぎていた。(世の中はちっともよくならないというイワンの絶望がgood。)