壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

昨日のように遠い日―少女少年小説選

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昨日のように遠い日―少女少年小説選 
柴田元幸編 文藝春秋 2009年 2000円

現在の少女少年のための物語ではなくて、昔、少女少年だったわたしたちにあの頃(昨日のように遠い日)を思い出させる物語が並んでいます。

『大洋』 バリー・ユアグロー
自分が想像した大洋に漕ぎ出した少年は、哀しかったかもしれない。

『ホルボーン亭』 アルトゥーロ・ヴィヴァンテ
他の人は誰もおぼえていないけれど、自分だけの特別な思い出ってあるよねえ。

灯台』 アルトゥーロ・ヴィヴァンテ
子供時代を通り過ぎるあたりの微妙な気持ち。かつての自分が他人のように思える日。

『トルボチュキン教授』 ダニイル・ハルムス
そういえば、なんでも知ってるふりをしている子がいたなあ。こんな教授に変装してみたかったのかも。

『アマデイ・ファラドンダニイル・ハルムス
ひよこおどったよ/トゥン・ルン・ディン・ディ・リン

『うそつき』 ダニイル・ハルムス
うそでしょう/うそつき うそつき うそでしょう

『おとぎ話』 ダニイル・ハルムス
小さなレーナちゃんの想像力にヴァーニャ少年はたじたじ。

『ある男の子に尋ねました』 ダニイル・ハルムス
どうして肝油が飲めるの?

『猫と鼠』 スティーヴン・ミルハウザー
トムとジェリーミルハウザーが文字にすれば、こんなにブラックで妙に思索的なドタバタに仕上がる。

『修道者』 マリリン・マクラフリン
少女とおばあさんは相性がいいらしい。まったく別の時間を過ごしているようなのに繋がっている。

『パン』 レベッカ・ブラウン
少女ばかりの寄宿学校で、朝食のパンを巡って、憧憬と悪意とがうずまく。最後、パンがのどにつかえた~。エリザベス・ボウエンを思い出させる。

『島』 アレクサンダル・ヘモン
伯父さんの養蜂場で過ごした、サラエボの少年のボスニアでの夏。美しい自然と伯父が語る暗い記憶の対比が印象的。

『謎』 ウォルター・デ・ラ・メア
わたしがもっともっとおばあさんになったら、こんな風に記憶を大きな箱に閉じ込めて、そおっと忘れてしまおう。

そうそう、附録に漫画も付いてます。