壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

色―世界の染料・顔料・画材―民族と色の文化史 アンヌ・ヴァリション

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色―世界の染料・顔料・画材―民族と色の文化史 アンヌ・ヴァリション
河村真紀子/木村高子訳 マール社 2009年 2500円

色の文化史に興味を持って、青の歴史不思議な緑の話を読んできました。図書館で見かけたので手に取りましたが、これはカラー図版が豊富でパラパラみるだけでも楽しい本です。「白」「黄」「赤」「紫」「青」「緑」「茶と黒」の項目それぞれに、色の歴史、世界各地の習俗と色の関係、顔料や染料の発見と利用法までが紹介されています。

色に籠められたイメージやメッセージは、民族によっても時代によっても異なります。例えば「黄」。インドでは黄色はポジティブな価値観を持つ幸せの色です。一方中国では再生と大地の中心を現し、皇帝一族だけが使用できる高貴な色でした。古代ギリシャ・ローマ時代にはサフラン色が好まれる色でしたが、帝政ローマでは赤や紫がもてはやされるようになりました。中世ヨーロッパでは黄色はネガティブな意味合いが強調されるようになり、ユダヤイスラムという非キリスト教徒を表す排除の標章となりました。

「白」は神聖な色であると同時に喪の色でもあり、さまざまな白色顔料が工夫されていました。卵や貝の殻を粉にしたもの、白亜、カオリンであり、鉛白が最も使われていましたが、毒性のため使用が禁じられ、亜鉛華にとってかわられました。また白い素材を得るため、中世日本では茶の木灰による絹の漂白が行われていました。18世紀の終わりに塩素の脱色作用が発見されるまでは、各地で、粘土、ソープワート、硫黄による漂白が主流でした。

<図版から>
左はパプアニューギニアの女性が白亜と黒炭で体を塗り分けている。寡婦は全身を白く塗る。
右は寡婦となったメアリー・スチュアート(1542-1587)の白い喪服。この後貴族社会では喪服は黒になった。
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