壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

猫とともに去りぬ ジャンニ・ロダーリ

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猫とともに去りぬ ジャンニ・ロダーリ
関口英子訳 光文社古典新訳文庫 2006年 560円

「パパの電話を待ちながら」よりは、シュールな味が少なくて、皮肉や風刺の色合いの濃い短編集でした。でもその寓意はあまり考えずに楽しめばいいのでしょう。現代の民話といった風情です。

「猫とともに去りぬ」国鉄を退職したアントニオ氏は家庭に居場所がなくてニャンと猫になったんだにゃ。(ローマの遺跡の鉄柵を越えるとスルリと猫になれるし、反対に越えれば人間に戻れるんだけれど、本当に戻ってよかったのだろうか)
「社長と会計士 あるいは 自動車とバイオリンと路面電車」栓抜き部品工場の社長は素晴らしい車を持っていた。ところが貧しい会計係りはもっと素晴らしいものを持っている。
「チヴィタヴェッキアの郵便配達人」体は小さいが力持ちの郵便配達人を、局長は重量挙げのチャンピオンにしたい。(あまりに急いで郵便を配達したら速達が前の日に届いてしまったとか、急いで眠ったので時間を逆戻りしたなんていうところは面白い)
「ヴェネツッアを救え あるいは 魚になるのがいちばんだ」水没を防ぐために家族みんなで魚に変身した一家。(原因は運河にたまった未決書類というお役所仕事だったそうな)
「恋するバイカー」バイクと結婚したいと家出した息子に大甘の両親
「ピアノ・ビルと消えたかかし」拳銃ではなくてピアノを武器に決闘するカウボーイ(「フーガの技法」がなんといっても最強らしい)
ガリバルディ橋の釣り人」魚が釣れるおまじないの言葉を自分のものにしたい男(繰り返される話のエスカレートぶりが可笑しい)
「箱入りの世界」空の容器が巨大化して世界を占拠
「ヴィーナス・グリーンの瞳のミス・スペースユニバース」スペース版シンデレラ
「お喋り人形」女の子らしいお人形遊びを拒否するお人形
ヴェネツィアの謎 あるいは ハトがオレンジジュースを嫌いなわけ」サン・マルコ広場を宣伝に使おうとした広告クリエーターの失敗の原因
「マンブレッティ社長ご自慢の庭」横暴な社長は植物に鞭打った。庭の花たちはついに復讐を始めた
「カルちゃん、カルロ、カルちゃん あるいは 赤ん坊の悪い癖を矯正するには……」超能力ベビーが普通の子に成長するまで
ピサの斜塔をめぐるおかしな出来事」ピサの斜塔を奪いに来た宇宙人をうまいこと騙した。(こういうフィギャーは、どこの土産物店にもありますよね)
「ベファーナ論」子供たちに贈り物を届ける魔女ベファーにつきものは、ほうきとずだ袋とおんぼろ靴。
「三人の女神が紡ぐのは、誰の糸?」アドメトス王は身代わりとして死ぬ運命の王妃の死を嘆いていると、ヘラクレスが王妃を助けてしまう。