壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

殺人にうってつけの日 ブライアン・フリーマントル

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殺人にうってつけの日 ブライアン・フリーマントル
二宮馨訳 新潮文庫 2007年 860円

冷戦後、失業したエスピオナージやスパイたちはどうしているのかと思っていたら、こんなところにいました。

元CIA工作員のメイソンは、協力者のKGB工作員ソーベリに裏切られて妻を奪われた挙句に逮捕されました。15年の獄中生活で彼ら二人に復讐することだけを考え、模範囚として体を鍛え、ハッキングを学び用意周到な復讐計画を練っていました。一方、元妻のアンとソーベリ(改名してスレイター)は結婚して幸せな家庭生活を送っていました。メイソンの仮出所が決まり、やっと復讐計画が開始されました。

冒頭でメイソンが獄中で懸命に努力している姿が描かれているので、メイソンを応援したくなるのですが、読み進むうちに、元妻アンに対してのDVなどメイソンの悪党ぶりが明らかになってきます。スレイター夫妻は証人保護プログラムの元に置かれてはいるのですが、メイソンの出所を知らせる手紙が来ただけでした。CIAの係員はまったくのド素人で頼りにはならないようでした。

メイソンは着々と復讐の手を打ってくるのに、スレイターの方はメイソンが本当に復讐を企てているのか確証が持てないままです。メイソンの残忍さを知るアンはおびえきってパニックになるのですが・・・。最後、アンの決死の開き直りが見事でした。

久しぶりのスパイ物で手に汗握る思いでしたが、本当はスパイというよりただの私闘ですけどね。