壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

グラーグ57(上・下)   トム・ロブ・スミス

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グラーグ57(上・下) トム・ロブ・スミス
田口俊樹訳 新潮文庫 2009年 各700円

前作『チャイルド44』はもちろん面白かったけれど、陰惨な事件に気が滅入ってしまい、読んでいて辛かった。今度はそんなことにならないように注意しながら読み始めました。そのせいかどうか、前作以上に楽しめ、久しぶりに一気読みでした。

前回の事件で両親を亡くしたゾーヤとエレナ姉妹を養女としたレオ・デミドフ。創設された殺人課の捜査官として二件の自殺を調べているレオの元に、フルシチョフが行ったスターリン批判の『Secret Speech(原題)』が送りつけられた。スターリン体制下逮捕投獄された者たちが釈放され、復讐が始まった。かつてレオが罠にかけて逮捕した司祭ラーザリの妻フラエラは犯罪者集団の頭として、レオを追い詰めていく。誘拐されたゾーラを救うため、シベリアの強制収容所『グラーグ57』に潜入、さらに動乱のハンガリーへ・・・。レオはゾーラの心までも取り戻せるのだろうか。

ミステリの要素は殆ど消え、ストーリーの大半はアクションたっぷりの冒険物になっています。結末は想定内でしたが、司祭の妻フラエラの複雑な復讐心、両親の仇としてレオを憎むゾーラの葛藤、そしてハンガリー動乱の場面が読みどころでしょう。第三作もあるそうで、レオの贖罪の物語がどんな展開をみせるのか楽しみです。