壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

レイチェル   ダフネ・デュ・モーリア

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レイチェル   ダフネ・デュ モーリア
務台夏子訳 創元推理文庫 2004年 1260円

 

短編集「鳥」 「破局」がなかなかのものだったので、第二の「レベッカ」といわれる本書も読んでみました。

 

「わたし」フィリップ・アシュリーは24歳、19世紀末コーンウォール地方の地主の跡継ぎです。両親を早くに亡くして年の離れた従兄アンブローズに育てられました。彼が静養地のフィレンツェで遅い結婚をしたと聞き、相手の女に嫉妬を覚えるほどに敬愛していました。さらに謎の手紙が届き、不審に思ったフィリップはフィレンツェを尋ねました。そこで彼が急逝したことを知り、妻となった女性レイチェルに強い怒りと疑いを持ちました。

 

ところが、レイチェルがコーンウォールの館を訪れたときから、10も年上の彼女に次第に心を奪われていきました。小柄で美しい女性で、屋敷の使用人や小作人にまで配慮が行き届き、フィリップに対しては姉か母親のように優しく振舞うのでした。25歳になれば、信託財産を自由にすることができる。そうすれば彼女に結婚を申し込むのだと、フィリップは想いがつのり、アンブローズが遺した告発の手紙さえ、迷った挙句に無視するのです。レイチェルは果たしてアンブローズを手にかけたのか。

 

24歳のフィリップの一人語りなんですが、何しろ世間知らずのお坊ちゃまなので、おろかな行動ばかりが目立ちます。それはないだろう”というくらい徹底的に手玉に取られているので、この主人公にまったく思い入れができません。もう全部騙されればいいのに、と思います。でも、フィリップという若い男性の立場なら、やはりこういう女性には騙されるんでしょうね。

 

レイチェルがファム・ファタールであることはたしかでも、そこに計画的な悪意があるのか、単に無意識なのかは、最後まで明らかにはされていません。読者が判断せよということでしょうか。法的に立証困難でもあるみたいですし、なかなか意外な巧い結末でした。

 

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ここ10年くらいはインフルエンザにかかったことなどなかったのですが、今年はついにダウンしました。あまりに苦しいので近所の医院に行き、A型ですねといわれ(血液型じゃない)、とうとうタミフルに手を出しました(別に禁断の薬でもないですけど)。一週間寝こみ、そろそろ回復かともおもいますが、喘息が出て、さらに、もしかして花粉症?

 

「安静」というのは、私の場合「読書」を意味するので、たくさん本が読めました。中味はかなり忘れていますが、すべて消え去らないうちに記事にしなければ。でもまだヘロヘロです。