壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

支那そば館の謎 裏京都ミステリー 北森鴻

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支那そば館の謎 裏京都ミステリー 北森鴻
光文社 2003年 1500えん

前の日に読んだものの余波で、裏京都ミステリー(小京都ミステリーか!)と銘打った連作短編シリーズの一作目を読みました。先日、「なぜ絵版師に~」を読んだせいか、この本でもタイトルが「もじり」になっているような気がしますが、「**の憂鬱」「**の晩餐」「***夜に」「**の人」「**館の謎」なんて既存作品が多すぎて、もじりというより地口かしらん。

不動明王の憂鬱」「異教徒の晩餐」「鮎踊る夜に」「不如意の人」「支那そば館の謎」「居酒屋 十兵衛」

名うての広域窃盗犯だった有馬次郎は、嵐山にある大悲閣千光寺に身を寄せています。慈悲深い住職のおかげで悪事から身を引き、寺男として修行の毎日です。ところが大悲閣にちょくちょく訪れる、みやこ新聞の自称「エース記者」折原けいと、京都府警の碇屋警部(狩矢警部か!)が難事件を持ち込んでは、有馬次郎をひっぱりこみます。

<僕>モードから<俺>モードにスイッチした有馬次郎は、蛇の道は蛇、生来の勘と闇の世界のつながりを生かして事件を解決しますが、しかし凶状持ちとしてはあまり表舞台には出られない。さらに本当の慧眼の持ち主は住職で、事件の裏の裏までお見通しです。

どの話もきれいにパターン化されていて事件のほうはあまりたいしたことがないのですが(二時間ドラマか!)、それにまつわる京都独特の風習がひどくマニアックで、京都の人だってわからないんじゃないのかなあと思うくらい。六つの短編はそれぞれ、銭湯、鯖鮨、大文字、太秦、町屋、マッチが重要なキーワードですが、こう言ったってネタバレにはならないと思います。だってわからないょ、こんなの、禅問答のようなこじつけ。

推理作家協会賞を受賞したというバカミス作家水森堅(北森鴻か!)を準レギュラーに迎え、ますます冴え渡るドタバタ。美味しそうな京料理と、もう京都の町の地図を見たくなくなるくらいのあほさ加減が気に入ったので、(次回に続く!)。