前の日に読んだものの余波で、裏京都ミステリー(小京都ミステリーか!)と銘打った連作短編シリーズの一作目を読みました。先日、「なぜ絵版師に~」を読んだせいか、この本でもタイトルが「もじり」になっているような気がしますが、「**の憂鬱」「**の晩餐」「***夜に」「**の人」「**館の謎」なんて既存作品が多すぎて、もじりというより地口かしらん。
名うての広域窃盗犯だった有馬次郎は、嵐山にある大悲閣千光寺に身を寄せています。慈悲深い住職のおかげで悪事から身を引き、寺男として修行の毎日です。ところが大悲閣にちょくちょく訪れる、みやこ新聞の自称「エース記者」折原けいと、京都府警の碇屋警部(狩矢警部か!)が難事件を持ち込んでは、有馬次郎をひっぱりこみます。
<僕>モードから<俺>モードにスイッチした有馬次郎は、蛇の道は蛇、生来の勘と闇の世界のつながりを生かして事件を解決しますが、しかし凶状持ちとしてはあまり表舞台には出られない。さらに本当の慧眼の持ち主は住職で、事件の裏の裏までお見通しです。
どの話もきれいにパターン化されていて事件のほうはあまりたいしたことがないのですが(二時間ドラマか!)、それにまつわる京都独特の風習がひどくマニアックで、京都の人だってわからないんじゃないのかなあと思うくらい。六つの短編はそれぞれ、銭湯、鯖鮨、大文字、太秦、町屋、マッチが重要なキーワードですが、こう言ったってネタバレにはならないと思います。だってわからないょ、こんなの、禅問答のようなこじつけ。