インドがらみのブッカー賞(2002年)というだけでなく、大好きな漂流物で動物物とあれば読まずにいられません。
父親の経営する動物園を見て育ったインドの少年パイは、動物行動学にとても詳しい。さらに生まれながらのヒンドゥー教徒でありながら、敬虔なクリスチャンであり熱心なイスラム教徒で、どの神も分け隔てなく愛するという、とんでもなく柔軟な宗教観の持ち主です。
第二部では、パイの一家は動物園の動物とともに貨物船でカナダに移住することになるのですが、途中で船は沈没し、パイ少年は一匹のベンガルトラとともに227日間太平洋を漂流することになります。壮絶なサバイバルは時として幻想をともなうようで、面白く不思議な物語が語られます。そして生き延びる上で、動物行動学の知識が不可欠だったのです。そして、ごく短い第三部で驚きの結末が騙られます。どちらが語りでどちらが騙り?
前書きを読んだときから、何か仕掛けがあるとは予想していましたが、少年パイのサバイバル物語が面白くてつい引き込まれ、最後に仕掛けに嵌って、笑いました。でも仕掛けがなくても充分に面白い。