壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

氷のスフィンクス ジュール・ヴェルヌ

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氷のスフィンクス ジュール・ヴェルヌ
古田幸男訳 集英社文庫 1994年 880円

突然に不可解に終わった、ポオの「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」のヴェルヌ的解決編です。

ケルゲレン島からスクーナー船ハルブレイン号に乗客として乗り込んだのは、好奇心旺盛な博物学者ジョーリング。ハルブレイン号の船長レン・ガイは、なんと、アーサー・ゴードン・ピムを乗せたジェイン号の船長ウィリアム・ガイの弟だったのです。偶然にも流氷の上にジェイン号の航海士の遺体と手記が発見され、ジェイン号の生き残りを探しに南極圏への航海が始まりました。もちろん、難破、漂流、無人島暮らしに水夫たちの反乱と、お決まりの事件が起きます。

ポーの描いた南極の不思議な世界は何だったのか、はやく結末を知りたいのに、大時代的で冗長な筋運びのためにじれったくてたまりませんでした。結局のところ、ジョーリングたちは「テケリ・リ」とか「アナムウ・ムウ」と叫ぶ原住民にであう事はなく、最後はピムの幻覚だったかもしれないという解釈です。「ピムの物語」を発表したポオの言葉にも虚偽の部分があるということで、ポオの幻想世界の謎を、ヴェルヌはあくまでもリアルな世界で解決しています。

もちろんリアルとはいっても、南極点を氷山に乗って通り過ぎ、「氷のスフィンクス」というとんでもないものを最後に配置する、ヴェルヌらしい終わり方でした。(「氷のスフィンクス」に遭遇する場面は映像化したらおもしろそう。)

「ピムの物語」のもう一つの続編ルーディ・ラッカー「空洞地球」を借りてきました。でもその前に返却期限の迫った本が二冊あり、もう一つ気になる『漂流無人島物』もあります。