1616年の夏の終わりに、北極海のスヴァーバル諸島の無人島に置き去りにされた一人の男。乗っていた捕鯨船は翌年の夏の初めに迎えに来ることになっていました。極北の地で厳冬を一人で過ごすことをみずから望んだトマス・ケイヴに何があったのかが、次第に明らかになってきます。
太陽は沈んだままオーロラが激しく踊る極寒の地は、人間の生存を許さないかのようです。厭世観から人里はなれた土地を選んだわけではなく、氷雪に閉ざされた極限状況を必ず生き抜こうとする意志を持つケイヴが、過去の幻覚から脱却していきます。
彼の心は救済されたということでいいのかどうかわからないのだけど、すべてのものが凍りついた極寒の無人島は豊かで清浄な場所であり、春になって現れた捕鯨作業の跡は醜く、「人間はあそこへ行くべきでなかった」というケイヴの自然に対する畏敬の気持ちは素直に納得できます。
このところ、漂流記や無人島サバイバル関連の本を探していますが、これはちょっとテーマが違いますね。北極海の島の名前は子供の頃に覚えたのか、スヴァーバル諸島のスピッツベルゲン、ノヴァヤゼムリャ、セヴェルナヤゼムリャ、ノヴォシビルスクなんて名前を脈絡もなく思いだします。そういえばソ連は北極で核実験していましたね。
次に読む本の選定を、漂流つながりにするか、翻訳者つながりにするか迷うけれど、とにかくずんずん読みます。