壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

冷蔵庫との対話 アクセル・ハッケ

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冷蔵庫との対話 アクセル・ハッケ
諏訪功訳 三修社 2004年 2200円

アクセル・ハッケが南ドイツ新聞に連載しているコラム集だそうです。前回読んだ「キリンと暮らす クジラと眠る」よりは現実的だけれど、彼の日常生活はどこかシュールです。妻パオラと息子ルイスの三人暮らしで、なんとなく家族に頭の上がらないハッケは、夜中にボッシュという名前の、なじみの旧型冷蔵庫(兼友人)と会話しながら、冷えたビールを飲むのです。

ハッケもボッシュもコンピューターやインターネットが苦手で、夜中に二人?でぼやきあいます。話の多くは"おじさんのぼやき"ですが、頻繁にハッケの妄想は止めどがなくなり、シュールでいささかグロテスクな世界にはいりこみます。しかし、この妄想によってハッケの日常は平静に保たれているようで、現実にはよき夫よき父親です。

長年なじんだ家電製品には愛着があってなかなか捨てられません。冷蔵庫って特別な感じがします。三十年近く使っていた冷蔵庫のパッキングがだめになり、さんざん思い悩んだ末に新しい冷蔵庫に買い換えたのは昨年のこと。冷却機能は立派に動いていたので、電気屋さんに運ばれていくときには、「ごめん」と言いたい気分。

リサイクル料金を払ったのだから処分されているはずだけれど、万一どこかの国に運ばれて使われていたらちょっとうれしいかも。大きくて新しい冷蔵庫は頼りになるヤツで、やっと愛着がわいてきました。一日六回食の夫のために、冷蔵庫と対話する回数も増えました。