壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

最後の場所で

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最後の場所で チャンネ・リー A Gesture Life Chang-rae Lee
高橋茅香子 訳 新潮クレストブックス 2002年 2300円

新潮クレストブックスシリーズを探していて見つけた本です。地味な装丁のペーパーバックスですが、裏表紙の推薦文につられて読み始めました。著者はソウルで生まれ、三歳で渡米した韓国系アメリカ人作家。韓流から韓国の純文学を読みたいと思ったのですが、どれを読んでいいのかわからなくて、まずはこれにしましたが、この本のジャンルは韓国ではなく、英米

評論家ミチコ・カクタニによれば、「リーは、気品ある文体で、感情を押し殺したひとりの男の静かな人生を舞台に、サスペンスを紡ぎだしていく。洞察力と人間味あるれるこの小説には、二つの文化と二つの命に心を奪われた男の過去と現在が、みごとに描かれている。」だそうです。翻訳では、その気品ある文体はよくわからないのですが、表現の端正さや穏やかさはうかがえます。

小説で、しかもサスペンス要素(だんだんに解き明かされる謎)の入っているものは、ネタバレにならないように紹介文を作ってほしいと思うのですが、表紙折り返しの説明文はそういう意味で不適切。主人公のだんだんに明らかになってくる過去や出自については説明すべきではないと思いますが、でもこれがなかったら戦地でのやりきれないシーンで読むのをやめたかもしれません。ひどく重い部分もありますが、最後の、新たな心の旅立ちは暖かな感動に満たされていました。